抄録 |
【はじめに】近年、画像診断機器の進歩に伴い膵動静脈奇形(以下AVM)の報告例は増加している。その多くは消化管出血や腹痛といった症状にて発見されることが多いが、時に無症状にて発見されることもある。今回我々は、胆嚢の精査中に偶然発見された膵AVMを経験したので報告する。【症例】症例は75歳・男性。今まで腹部CT検査を受けたことはなかった。2008年4月肝機能障害の精査を勧められ当院受診した。腹部CTにて膵鈎部に径約2cmの著明な造影効果を示す腫瘤陰影が認められたため、精査目的にて当院入院した。腹部超音波検査にて膵鈎部に径約2cmの低エコー部が認められ、ドップラー検査にて同部位に血流が認められた。血管造影では動脈相早期に網目状の異常血管の増生と門脈の早期描出が認められた。更に3D-CTでは胃十二指腸動脈・上腸間膜動脈を流入血管とする網目状の血管増生と門脈の早期描出が認められた。上部消化管検査にて十二指腸水平脚に蛇行した粘膜下の血管拡張が認められたが、出血を示唆する所見は認められなかった。以上より膵鈎部のAVMと診断した。無症状であること・RC signといった出血の危険性が高い所見が認められなかったこと・比較的高齢であることより治療は施行せず経過観察することとした。現在10ヶ月外来通院中であるが、AVMに変化は認められず、出血といった症状も認められていない。【結語】無症状で発見された膵AVMを経験したので報告した。膵腫瘤の鑑別には膵AVMも念頭に置くことが必要と思われた。 |