セッション情報 |
研修医発表
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タイトル |
A型胃炎に合併した多発胃カルチノイドの1例:内視鏡治療後の経過
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演者 |
丸山 聡子(公立学校共済組合九州中央病院研修医) |
共同演者 |
檜沢 一興(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 中守 真理(公立学校共済組合九州中央病院病理), 工藤 哲司(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 飯田 三雄(九州大学大学院病態機能内科学) |
抄録 |
症例は74歳女性.近医の検診胃カメラにて多発胃カルチノイドを指摘された.胃全摘術を勧められたが、カンドオピニオンを希望し当院を受診した.検査成績にて血色素 10.4g/dL、血清鉄 28µg/dLと軽度の鉄欠乏性貧血を認めた.血中ガストリン値は4622pg/mL (正常200未満)と高く、葉酸、Vit-B12は正常で、抗胃壁抗体は陰性であった.上部消化管X線検査では胃体部皺襞は完全に消失し、胃粘膜像はびまん性に微細顆粒状を呈していた.上部消化管内視鏡検査でも胃粘膜は全体に萎縮が著明であり、体上部から体中部大弯を中心に過形成性ポリープの芽に類似した発赤調の小隆起を数個認めた.7ヶ所からの生検でもA型胃炎を伴った多発胃カルチノイドと診断した.腹部エコー検査で転移はなく、形態的にも悪性度は低いと判断し内視鏡切除を勧めた.5mm位の最大病変を3個切除した結果、カルチノイド腫瘍の周囲粘膜には多数のendocrine micronestsを認めたが、カルチノイド腫瘍自体は何れも粘膜下層深部への浸潤は認めなかった.そこで説明と同意のうえ、以後は年一回の上部消化管内視鏡による経過観察の方針とした.3年後の現在まで再発はなく残存する微小隆起も極めて不明瞭であり、生検でもカルチノイド腫瘍は認めていない.胃カルチノイドをRindiらは、(1)A型胃炎に伴うType 1、(2)Zollinger-Ellison症候群や多発内分泌腫瘍に伴うType 2、(3)散発性で予後不良なType 3に分類した.A型胃炎では胃壁細胞の萎縮による無酸のため幽門腺領域のガストリン分泌細胞が増加し、誘発された高ガストリン血症により胃底腺内分泌細胞が刺激増殖され胃カルチノイドが発生することが明らかになった.Type 1の胃カルチノイドは多発するが予後良好であり、欧米のガイドラインでは内視鏡治療か前庭部切除を推奨している.本邦では1cm以下の胃カルチノイドでも7%に転移があり、Type 1とType 3で予後に差はないとする報告がある.このため本邦では内視鏡治療後の経過観察に関する報告は少なく、今後の症例の蓄積が必要と考え報告した. |
索引用語 |
A型胃炎, 胃カルチノイド |