セッション情報 一般演題

タイトル

NBI拡大観察が有用であった同時多発咽頭・食道早期癌の1例

演者 別府 孝浩(福岡大学筑紫病院 消化器科)
共同演者 高木 靖寛(福岡大学筑紫病院 消化器科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器科), 田邉  寛(福岡大学筑紫病院 病理部), 岩下 明徳(福岡大学筑紫病院 病理部)
抄録 近年、咽頭癌の発見はNBI(Narrow Band Imaging)拡大観察が有用と言われている。症例は82歳、男性。主訴は胸焼け。現病歴:胸焼けが持続するため、平成20年12月末に近医を受診。内視鏡検査で下部食道にヨード不染を認め食道早期癌が疑われたため平成21年1月29日、当院紹介入院となった。上部消化管内視鏡検査では、通常観察では門歯から33cmの下部食道に平坦で血管透見の不明瞭化した領域と一部に淡い発赤粘膜の混在した0-IIb病変を認めた。ヨード染色では30-35cmまで1/3周の辺縁不整な不染域を認めた。NBI拡大観察では、上皮乳頭内血管は軽度の増生、拡張、蛇行を呈し、異型血管が認められた。以上の所見からm1主体の上皮内癌の所見と診断した。さらに術前内視鏡検査による多発病変の検索では、NBI観察で右梨状陥凹に約5mm程度のbrownish areaを認めた。病変は白色混濁した扁平隆起で、NBI拡大観察では上皮乳頭内毛細血管の明らかな拡張、延長が認められ上皮内癌が強く示唆された。なお、この咽頭病変は通常観察では拾い上げ出来なかった。咽頭癌を合併する表層拡大型食道癌であったため、治療は一期的に全身麻酔、気管内挿管下にて食道病変はESD、咽頭病変はEMRCで切除した。切除標本病理組織では、食道病変は腫瘍径50×25mm, 0-IIb、深達度m1、脈管侵襲なく、完全切除で根治的治療と考えられた。また、咽頭病変も、腫瘍径5×5mm、0-IIa、上皮内癌で脈管侵襲なく追加治療は行なわず経過観察とした。NBI拡大観察の出現により、通常観察では認識困難な食道や咽頭の微小癌や多発病変の拾い上げができるようになり、内視鏡的に治療可能な症例の報告も増加している。今回、通常観察では拾い上げ困難であったが、NBI観察で認識可能で、内視鏡的に治療できた同時多発咽頭・食道癌の1例を経験した。食道癌の内視鏡精査の際には中・下咽頭癌の重複を念頭に置き、NBI拡大観察を用い注意深く観察する必要がある。
索引用語 咽頭・食道癌, NBI拡大観察