共同演者 |
棚橋 仁(大分大学 医学部 消化器内科), 村上 和成(大分大学 医学部 消化器内科), 児玉 雅明(大分大学 医学部 消化器内科), 沖本 忠義(大分大学 医学部 消化器内科), 八坂 成暁(大分大学 医学部 消化器内科), 阿南 重郎(大分大学 医学部 消化器内科), 安部 高志(大分大学 医学部 消化器内科), 水上 一弘(大分大学 医学部 消化器内科), 小野 英樹(宇佐高田医師会病院 消化器科), 藤岡 利生(大分大学 医学部 消化器内科) |
抄録 |
【症例】74歳男性【現病歴】平成18年5月に全身倦怠感を主訴に前医を受診。多発性肝細胞癌・C型肝硬変と診断され, 計4回抗癌剤動注療法が施行された。平成20年3月, 膵体部に不整形腫瘤を認め, 精査目的にて当科を紹介された。【検査所見】血清AFP 2846 ng/ml と高値で, HCV 抗体陽性であった。膵酵素の上昇は認めなかった。【画像所見】腹部造影CTでは, S8の径8cmの境界不明瞭な結節を中心として, 肝両葉に早期相で濃染し, 遅延層で低吸収を示す腫瘍が多発していた。膵体部には径5cm大の早期相で不均一に造影される不整形の腫瘤を認めた。MRIで同病変はT1強調画像で膵実質と等信号, T2強調画像で高信号を示した。MRCP では主膵管の途絶や狭小化・拡張は認められなかった。画像的には肝細胞癌の転移のほか, 膵原発のneuroendocrine carcinomaが疑われた。確定診断のため, CTガイド下の生検を施行した。【病理所見】好酸性の細胞質とPAS染色陽性の顆粒を有する細胞の索状増殖が認められた。免疫組織学的にこれらの細胞は抗hepatocyte抗体陽性, アミラーゼ, クロモグラニンA, シナプトフィジン陰性であることより, 肝細胞癌の膵転移と診断した。【経過】肝内病変に対してファルモルビシン・マイトマイシンCによる動注療法を施行した。術後, 肝右葉を中心として乏血性の腫瘍の急激な増大が認められ, 肉腫様変化と考えられた。膵転移巣への動注療法も検討したが, 生命予後不良と考えられ, これ以上の積極的加療は行わず, 自宅退院となった。【考察】肝細胞癌の肝外転移は肺・骨・副腎・リンパ節が主体で, 本例のごとく, 膵実質への転移は非常に稀である。本症例は漸増性の造影効果や膵管の途絶・狭小化を欠く点で, 浸潤性膵管癌は否定的であったが, 造影早期相での濃染を特徴とするneuroendocrine carcinoma との鑑別が必要であった。【結語】肝細胞癌の膵転移の一例を経験したので文献的考察を加え, 報告する。 |