セッション情報 要望演題6 「画像診断の進歩と肝癌治療の新たな展開」

タイトル

造影超音波検査で観察される肝細胞癌結節内の血流信号について

演者 山下 信行(九州厚生年金病院 内科)
共同演者 上平 幸史(九州厚生年金病院 内科), 中野 龍治(九州厚生年金病院 病理)
抄録 造影超音波検査のVascular phaseにて肝細胞癌結節内に観察される造影パターンについて,“枯れ枝状”と表される所見が高悪性度を示唆する所見として報告されている.今回われわれは当院の検査における同様所見の頻度,および組織像との関連について検討を行った.2002年から2005年までの4年間で初めて診断された単発肝細胞癌症例は当院において161例であった.造影超音波検査を行なった径3cm以下の症例は64例であり,生検などにより組織分化度が判明した症例は48例であった.今回の検討ではそれらの結節を対象とした.超音波診断装置は持田シーメンス社製セコイア512で,造影剤はレボビストを用い,MI値1.9前後,0.25から0.5秒前後の間欠送信にて観察を行なった.腫瘍結節内の造影所見については静注後45秒前後までの画像をDICOM形式で保存し,後日結節の内部に比較的太い造影エコーが観察されるもの(1群)と観察されないもの(2群),判定(観察)不能とに分類した.腫瘍径が2cm以下の35結節では83%が観察・分類可能であり,1群10結節(29%),2群19結節(54%)であった.2cmを超え3cm以下の29結節では97%が観察・分類可能であり,1群18結節(62%),2群9結節(31%)であった.組織学的に高分化型肝細胞癌と診断された21結節(平均径1.6cm)では1群1結節(5%),2群16結節(72%)であった.中分化型21結節(平均径2.0cm)は1群13結節(62%),2群7結節(33%)であった.低分化型6結節(平均径2.6cm)は全て1群に分類された.今回の検討では造影剤にソナゾイドをもちいており,腫瘍内部の微細な血流を観察するには不向きなことや造影エコーの太さといった主観的な判断で分類を行なったため,客観性に乏しい検討であったことは否めない.しかしながら,結節の内部に比較的太い信号が観察されるものは,径の大きいものや中・低分化型肝細胞癌に多く,腫瘍の悪性度を示す所見であることが示唆された.
索引用語 造影超音波検査, 肝細胞癌