セッション情報 研修医発表

タイトル

多彩な内分泌学的症状を呈し集学的治療が奏功した肝腫瘍の1例

演者 上田 彰(国家公務員共済組合連合会浜の町病院 肝臓科)
共同演者 上野 新子(国家公務員共済組合連合会浜の町病院 肝臓科), 具嶋 敏文(国家公務員共済組合連合会浜の町病院 肝臓科), 高橋 和弘(国家公務員共済組合連合会浜の町病院 肝臓科), 相島 慎一(九州大学大学院形態機能病理)
抄録  【症 例】 45歳、女性。
 【現病歴】 2008年6月頃より高血圧を発症、8月より男性化徴候、下肢浮腫、腹部膨満、体重増加が出現、腹部エコーで肝臓右葉に径12.5cmの巨大腫瘤を指摘され当院紹介入院となった。
 【現 症】 154cm、56kg。脈拍100/分 血圧148/80 mmHg。顔面ににきび、脂漏性湿疹、血管拡張による紅潮あり、腹部に右季肋部に腫瘤を触知した。
 【検査成績】 AST 60 IU/l、ALT42 IU/l、と軽度の肝機能異常を認め、LDH は1063 IU/lと高値であった。AFP、PIVKAIIは正常、HBs抗原、HCV抗体は陰性であった。低K血症( 2.6meq/ l)と、低血糖(Glu 42mg/dL)を認めた。GH 0.36ng/nl 、インスリン0.30IU/mL以下、C-ペプチド0.70ng/mL、グルカゴン110pg/mldであった。起床時の採血でACTH 2.0pg/ml以下、アドレナリン10pg/nl、ノルアドレナリン977pg/ml、ドーパミン176pg/ml、コルチゾール10.2μg/dl、アルドステロン67.4pg/ml、DHEA-S 971 μg/dl、レニン活性19ng/mlであった。腹部CTで、肝右葉に12cm大の内部が不均一に増強される腫瘍を認め、下大静脈に腫瘍塞栓を認めた。胸部CTでは、両肺に多数の小結節影を認め、転移巣と考えられた。肝腫瘍生検組織では副腎癌、肝細胞癌、内分泌癌等が疑われた。
 【臨床経過】 TACE2回施行したが、一時的に治療反応を認めるだけだった。増大する腫瘍塞栓に陽子線照射を施行した。胸水が増加したため、sorafenivの内服開始したところ、1週間目で胸水の減少がみられ、1ヶ月目の評価CTにても肺転移巣、原発巣、血管内腫瘍塞栓の縮小が認められた。同時に高血圧、低血糖症状も明らかに改善傾向を示した。
【結 語】 低血糖、男性化徴候、高血圧等の多彩な内分泌学的症状を呈した肝腫瘍に対してTACE、陽子線照射、sorafeniv内服による集学的治療が効果的であった。
索引用語 肝癌, 集学的治療