セッション情報 一般演題

タイトル

心移植後に発症し診断に難渋した多発肝腫瘤の1例

演者 武石 一樹(九州大学大学院 消化器総合外科)
共同演者 武冨 紹信(九州大学大学院 消化器総合外科), 戸島 剛男(九州大学大学院 消化器総合外科), 森田 和豊(九州大学大学院 消化器総合外科), 梅田 健二(九州大学大学院 消化器総合外科), 植田 茂(九州大学大学院 消化器総合外科), 井口 友宏(九州大学大学院 消化器総合外科), 實藤 健作(九州大学大学院 消化器総合外科), 永田 茂行(九州大学大学院 消化器総合外科), 杉町 圭史(九州大学大学院 消化器総合外科), 池上 徹(九州大学大学院 消化器総合外科), 祇園 智信(九州大学大学院 消化器総合外科), 副島 雄二(九州大学大学院 消化器総合外科), 前原 喜彦(九州大学大学院 消化器総合外科)
抄録 【背景】画像診断の進歩により肝腫瘤の診断は大部分が可能となっているが、肝細胞腺腫や限局性結節性過形成(FNH)などの非定型症例では診断に苦慮することも少なくない。今回、心移植後に発症し、術前診断に難渋した肝内に多発するFNHの1例を経験したので報告する。
【症例】19歳女性。2歳時に修正大血管転位症、心室中隔欠損症に対して、Rastelli手術を施行した。以後徐々に慢性心不全が進行し、18歳時に海外にて心移植術を施行した。その際に海外にて月経困難症に対して経口避妊薬を6ヶ月間内服した。また、術後より免疫抑制剤(シクロスポリン、ミコフェノール酸モチフェル、プレドニン)の内服をしていた。移植6ヶ月後に背部痛および全身倦怠感を自覚した。検査所見ではHb:9.5mg/dlと貧血を認め、T-Chol:259mg/dlと高脂血症を認めるのみで肝機能は正常であった。肝炎ウイルスマーカーHBs-Ag(-)、HBs-Ab(+)、HBc-Ab(-)、HCV-Ab(-)であった。腫瘍マーカーはAFP:2.5ng/ml、PIVKA:26mAU/ml、シフラ:1.1ng/ml、CEA:0.9ng/ml、CA19-9:4.5U/ml、CA15:6.5U/ml、CA125:17.6U/mlといずれも正常範囲内であった。腹部CTにて肝内に早期造影効果を認める腫瘤を7個認め、最大径は3cmであった。FDG-PETでは両側の卵巣に生理的集積を認めるのみで肝内に多発する腫瘤には集積はなかった。肝腫瘍生検を施行したが肝細胞を認めるのみで、確診には至らなかった。病歴および画像所見より肝細胞腺腫と診断し、肝S2の突出した腫瘍の破裂予防および確定診断のため、移植後9ヶ月後に肝S2部分切除術を施行した。切除標本では腫瘍は黄白色調の弾性硬の境界明瞭な腫瘍で、中心部に瘢痕形成を認めた。術後病理診断はFNHであった。
【まとめ】心移植後に発症し、術前診断が困難であった多発良性肝腫瘍を経験した。移植後に発症したFNHの報告はなく、今回のように移植後短期間で多発する肝腫瘍を認めた場合、FNHも鑑別診断の一つとして念頭におく必要があると考えられた。
索引用語 肝臓, 肝腫瘍