セッション情報 一般演題

タイトル

高齢で門脈大循環シャント脳症を発症した非硬変肝の2症例

演者 東 晃一(九州大学 大学院 医学研究院 病態機能内科学 (第二内科))
共同演者 飯田 三雄(九州大学 大学院 医学研究院 病態機能内科学 (第二内科))
抄録 症例1は75歳、女性。慢性心房細動、甲状腺機能低下症、糖尿病、心原性脳塞栓症で通院中、全身倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐に続いて意識障害が出現したため、平成17年10月当科入院。入院時JCSII-10程度で発語なく、左上下肢に軽度の不全片麻痺を認めた。PT-INR 1.73(warfarin内服中)、T.Bil 2.2mg/dL、AST 58IU/L、ALT 34IU/L、血漿NH3 293μg/dL、ICG-R15 60.7%。頭部MRI検査では、T2強調で陳旧性梗塞病変を認めるものの拡散強調像で新鮮梗塞巣を認めず、またT1強調画像で大脳基底核の高信号域を認めなかった。一方、腹部CT検査では下腸間膜静脈~左卵巣静脈間にシャントを認めた。ラクツロース内服開始後、血漿NH3値は速やかに改善、意識障害も改善した。患者がこれ以上の治療を希望せず、内科的にfollow-upとなった。症例2は72歳、女性。慢性心房細粗動、甲状腺機能低下症、心原性脳塞栓症で通院中、平成15年に門脈肝静脈シャントを指摘されていたが、血漿NH3値正常であった。18年11月意識障害により転倒し他院へ搬送された際に血漿NH3高値を指摘され、アミノレバン点滴静注+ラクツロース注腸を施行され、続いてラクツロース内服が開始となった。その後も血漿NH3値は160~230μg/dLで推移し、肝性脳症の増悪・軽快を認めるため、治療目的で平成19年9月当科入院。入院時JCS1-1点程度で、軽度の失語・構語障害、右上下肢の不全片麻痺を認めた。PT-INR 1.53(warfarin内服中)、T.Bil 1.4mg/dL、AST 50IU/L、ALT 29IU/L、血漿NH3 142μg/dL。頭部CT検査で左基底核~放線冠、左小脳半球に陳旧性梗塞病変を認めた。腹部CT検査、血管造影検査で肝内S6、S3に門脈~肝静脈シャントを認めたものの、シャントが複数個存在し、シャント径が大きく血流が速いため塞栓術は困難と判断、内科的にfollow-upとなった。非肝硬変患者における門脈大循環シャント形成の原因として、先天的な機序、手術などによる癒着に伴うもの、門脈圧亢進症に伴うものなどが挙げられるが、平均発症年齢は60歳弱で、70歳以上の高齢発症は比較的稀である。われわれは70歳以上の高齢で門脈大循環シャント脳症を発症した非硬変肝の2症例を経験したので、文献的考察を加え報告する。
索引用語 門脈大循環シャント, 肝性脳症