| セッション情報 | 研修医発表 |
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| タイトル | 腹壁、右大腿のガス壊疽を合併し高圧酸素療法が奏効した上行結腸癌後腹膜穿破の一例 |
| 演者 | 工藤 健介(公立学校共済組合 九州中央病院) |
| 共同演者 | 皆川 亮介(公立学校共済組合 九州中央病院), 姉川 剛(公立学校共済組合 九州中央病院), 伊藤 修平(公立学校共済組合 九州中央病院), 長谷川 博文(公立学校共済組合 九州中央病院), 斎藤 元吉(公立学校共済組合 九州中央病院), 池部 正彦(公立学校共済組合 九州中央病院), 北村 昌之(公立学校共済組合 九州中央病院), 杉町 圭蔵(公立学校共済組合 九州中央病院), 實藤 健作(八木厚生会 八木病院), 野本 健一(八木厚生会 八木病院), 八木 博司(八木厚生会 八木病院) |
| 抄録 | 症例は63歳、女性。1週間前より全身倦怠感、食欲不振を自覚、次第に右大腿の腫脹、疼痛が出現した。自宅で様子を見ていたが、歩行困難、呂律不良、見当識障害が出現してきたため救急車で来院した。来院時意識はJCS1-2、Vital signは、体温35.3度、脈拍123/分、血圧160/85mmHg、SpO2は酸素3L下に99%であった。腹部理学所見では下腹部から両側腹部、右鼠径部~会陰、右大腿に及ぶ発赤、腫脹、疼痛、握雪感を認めた。腹部CTでは腹壁に浸潤する全周性腫瘤病変を上行結腸に認め、上記部位に一致する広範な炎症、気腫性変化を認めた。上行結腸癌の腹壁穿破、ガス壊疽と診断し緊急手術を施行した。上行結腸は側腹壁~後腹膜へ浸潤しており、後腹膜腔に膿瘍を形成していた。右半結腸切除術を施行し、続いて腹壁、右大腿のガス壊疽への処置に移った。筋膜上の色調は悪く異臭が漂っており、側腹部~右大腿まで広く筋膜を露出し開放創とした。術後診断はSE,N1,M1,H0,P2;StageIVであった。術後は人工呼吸管理下に敗血症、DICの治療を行い、抗生剤は嫌気性菌感染に対しメロペネム、クリンダマイシンを投与した。Vital signは一旦改善し、敗血症、DICからは離脱できたが、発熱、炎症反応高値が続き感染のコントロールが不良であった。そこで高圧酸素療法目的に第13病日に他病院へ転院、15日間高圧酸素療法を行ったところ奏効し、炎症反応改善、発熱もなくなった。第26病日に気管内チューブを抜管、第28病日に当院へ再入院となり食事を再開した。以後経過は良好で、第62病日現在自宅退院に向け下肢筋力低下に対するリハビリ中である。進行大腸癌の1.1~6.1%に穿孔がみられるが、その多くは遊離穿孔である。後腹膜への穿破は稀であるが、後腹膜や腹壁の嫌気性菌感染によりガス壊疽を発症した症例も稀ながら報告されている。ガス壊疽は予後不良であり、非クロストリジウムガス壊疽の予後はクロストリジウムガス壊疽より不良で、その死亡率は40%を超すと言われている。今回、大腸癌後腹膜穿破後に非クロストリジウムガス壊疽を合併し、高圧酸素療法が著効した一例を経験した。 |
| 索引用語 | 高圧酸素療法, ガス壊疽 |