セッション情報 | 研修医発表 |
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タイトル | 特発性腸間膜静脈硬化症の一例 |
演者 | 原田 雅子(宮崎大学医学部 卒後臨床研修センターDELIMITER潤和会記念病院 外科) |
共同演者 | 谷口 智隆(潤和会記念病院 外科), 樋口 茂輝(潤和会記念病院 外科), 宮崎 貴浩(潤和会記念病院 消化器科), 黒木 直哉(潤和会記念病院 外科), 吉山 一浩(潤和会記念病院 消化器科), 岩村 威志(潤和会記念病院 外科) |
抄録 | はじめに:特発性腸間膜静脈硬化症(idiopathic mesenteric phlebosclerosis; IMP)は1991年に世界で初めて報告され、1993年に新しい疾患概念として提唱された原因不明の稀な疾患である。今回我々は、偶然CTにて診断された一例を経験したので報告する。症例:53歳、女性、農家。既往歴:虫垂炎、癒着性イレウス、子宮筋腫による三回の手術癧あり。糖尿病、高血圧、高脂血症にて服薬中。家族癧:特記事項なし。現病歴:腰椎椎間板ヘルニアによる右腰痛でペインクリニック入院中に嘔気、嘔吐が出現し、イレウスが疑われて腹部CTが施行され、IMPと診断された。腹部CT:右側結腸の壁内から上腸間膜静脈へ連続する腸間膜の血管の石灰化が認められた。また、造影効果を伴わない上行結腸の壁肥厚があり、静脈硬化症に伴う虚血性変化が疑われた。大腸内視鏡検査: 盲腸から右側横行結腸に至る粘膜は暗青色に腫脹して鉗子圧迫では硬く触知し、小びらんの散在を認めた。注腸造影検査:上行結腸ならびに横行結腸の肝彎曲部付近には半月ひだの浮腫状肥厚を認めた。腹部血管造影検査:上腸間膜動脈造影にて右結腸動脈末梢や回結腸動脈末梢のvasa rectaの拡張・屈曲・蛇行、ならびに血管増生を認めた。いずれの画像診断でもIMPが強く疑われた。当該疾患による症状は無かったが、本人の希望により腹腔鏡補助下右側結腸切除術を施行した。切除標本では、病変は盲腸から肝彎曲部付近までに存在し、粘膜の暗紫色調変化、ひだの腫大・消失や壁肥厚、小びらんの散在がみられた。病理診断では、静脈壁の著明な線維性・硬化性肥厚と石灰化、粘膜下層の高度な線維化、粘膜固有層の血管周囲膠原繊維の著明な増生が見られた。粘膜下層の動脈壁にも硬化性変化が見られた。本疾患の原因の一つとして、大腸より特異的に吸収されるtoxic agentに対する曝露が推測されているが、本症例では漢方薬、その他臨床的に使用頻度の高い薬剤を内服中であった。 |
索引用語 | 特発性腸間膜静脈硬化症, 静脈石灰化 |