セッション情報 研修医発表

タイトル

保存的治療で軽快した十二指腸憩室の後腹膜穿破の1例

演者 小薗 直哉(公立学校共済組合 九州中央病院 )
共同演者 皆川 亮介(公立学校共済組合 九州中央病院 ), 姉川 剛(公立学校共済組合 九州中央病院 ), 伊藤 修平(公立学校共済組合 九州中央病院 ), 長谷川 博文(公立学校共済組合 九州中央病院 ), 斉藤 元吉(公立学校共済組合 九州中央病院 ), 池部 正彦(公立学校共済組合 九州中央病院 ), 北村 昌之(公立学校共済組合 九州中央病院 )
抄録 症例は77歳の女性で、突然の全身の震え、悪寒が出現し、当院へ救急車で搬送された。初診時、39度台の発熱と右季肋部圧痛を認めたが、腹部超音波検査では特に異常所見は認めなかった。血液検査ではWBC10130/μl、CRP2.3mg/dlと炎症反応を認め、またビリルビン値1.9mg/dlと軽度上昇を認めた。右季肋部圧痛の精査目的にて腹部CT検査を行ったところ、膵鉤部背側の後腹膜気腫と広範な脂肪織混濁が認められ、十二指腸下行脚の憩室穿破が強く疑われた。バイタルサインが安定していること、発症から受診までの時間が短いこと、後腹膜腔にドレナージの対象となる膿瘍がないことから保存的治療を行うこととした。絶飲食とし、輸液、抗生剤、PPIの投与を行ったところ、発熱と右季肋部圧痛は徐々に軽快し第5病日には消失、血液検査でもCRP値が第2病日に18.89mg/dlまで上昇したが以後は速やかに改善した。第9病日に食道胃内視鏡検査を施行したところ、十二指腸球部から乳頭部口側に炎症性と思われる全周性狭窄を認め憩室の確認が困難であった。そこで第10病日に上部消化管造影検査を施行したところ十二指腸下行脚に憩室が3か所認められ、そのうち1つが不整に造影され穿破した憩室と考えられた。第9病日に食事を開始、経過は良好で第16病日に自宅退院となった。十二指腸憩室は消化管憩室の中では大腸憩室に次いで頻度が高い疾患であるが、穿孔を来すことは比較的まれである。手術が行われる症例が多く、非手術症例での死亡率は以前は82%と高かったが、現在では診断、治療法の進歩により迅速な診断と適切な治療が行われ、良好な予後が期待できると考えられている。今回我々は保存的治療で軽快した十二指腸憩室後腹膜穿破の1例を経験したので報告する。
索引用語 十二指腸憩室後腹膜穿破, 保存的治療