セッション情報 研修医発表

タイトル

ダブルバルーン式小腸内視鏡にて術前診断し得た空腸低分化型腺癌の1例

演者 甲谷 太一(済生会熊本病院 消化器病センター)
共同演者 吉田 健一(済生会熊本病院 消化器病センター), 尾崎 徹(済生会熊本病院 消化器病センター), 上原 正義(済生会熊本病院 消化器病センター), 江口 洋之(済生会熊本病院 消化器病センター), 藤本 貴久(済生会熊本病院 消化器病センター), 多田 修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 須古 博信(済生会熊本病院 消化器病センター), 山口 祐二(済生会熊本病院 外科センター), 神尾 多喜浩(済生会熊本病院 病理)
抄録 症例は59歳,男性.当院受診の約1ヶ月前より,食事摂取後の腹痛と嘔吐を認めていた.近医を受診し上部消化管内視鏡検査と腹部エコーを施行されたが異常は指摘されなかった.しかしその後も同様の症状を自覚し,さらに腹痛増悪と嘔吐が出現したため,当院救急外来を受診した.腹部立位X線上で小腸鏡面像を認め,腹部CTにて空腸の一部に壁肥厚像とその口側腸管の拡張を認めたため,空腸イレウスと診断し,当科入院となった.入院後は胃管にて減圧した後,ガストログラフィンにて小腸造影を行ったところ,イレウスは解除していたが,空腸の一部に狭窄を疑う病変を認めた.診断のため,第4病日に経口的ダブルバルーン式小腸内視鏡検査を行ったところ,Treitz靱帯より約90cm肛門側の空腸に狭窄をきたす結節状隆起を認めた.生検の結果は低分化型腺癌であり,空腸低分化型腺癌と診断した.全身転移がないことを確認の上,第16病日に小腸切除術を施行した.切除標本では空腸に1.9×1.6cmの狭窄部位を認め,表面は凹凸不整な結節性隆起を呈していた.病理所見では,明瞭な核小体と核の大小不同,核縁不整を有する腫瘍細胞が充実性胞巣状または索状に浸潤増殖し,一部では腺管構造や細胞質粘液空胞を認め,低分化型腺癌の診断であった.癌は漿膜まで浸潤し,中等度の脈管侵襲像が散見された.調べられた13個のリンパ節には転移を認めなかった.今回我々は腸閉塞を契機に発見された空腸低分化型腺癌の1例を経験した.本症例においてはダブルバルーン式小腸内視鏡検査にて術前診断することが可能であった.原発性小腸癌のうち低分化型は稀とされ,文献的考察を含めて報告する.
索引用語 小腸低分化型腺癌, 小腸内視鏡