セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | TS-1が原因と考えられる間質性肺炎を発症し死亡した胆嚢癌の一例 |
演者 | 灰本 耕基(敬愛会 中頭病院) |
共同演者 | 笹野 なつき(敬愛会 中頭病院), 崎原 正基(敬愛会 中頭病院), 石原 健二(敬愛会 中頭病院), 中村 献(敬愛会 中頭病院), 知念 隆之(敬愛会 中頭病院), 石原 淳(敬愛会 中頭病院), 座覇 修(敬愛会 中頭病院), 石原 昌清(敬愛会 中頭病院), 金城 福則(琉球大学医学部附属病院 光学医療診療部) |
抄録 | 抗癌剤であるTS-1は消化器癌,頭頚部癌,肺癌,再発乳癌など,幅広い癌疾患に適応があり、内服薬という手軽さ,副作用の少なさから外来化学療法の中心となりつつある薬剤である.今回我々は,進行胆嚢癌に対し,TS-1単剤の化学療法を行い,副作用による薬剤性肺炎が重症化し救命できなかった症例を経験したので報告する. 症例は85歳女性.平成20年4月中旬から右季肋部痛を自覚し近医受診.腹部超音波検査で胆道系悪性腫瘍が疑われ,4月某日、当院紹介受診.造影CTにて,胆嚢癌stageIVb(リンパ節転移,肝・十二指腸浸潤)の診断で入院となる.T-bil 11.2 mg/dlと著明な黄疸があり,CTで肝内胆管と総胆管の拡張を認めたため入院第2病日,減黄目的にERBDを施行した.徐々に黄疸が改善(T-bil 1.1 mg/dl)したため,御家族に十分なimformed concentを行った上で,症状緩和,延命目的にTS-1単独療法を開始した.高齢のため投与量は75 mg/bodyから開始した.投与開始3日目(入院第15病日)から発熱あり.しかし入院後より度々発熱あったため腫瘍熱として対応した.投与開始4日目よりSpO2低下し,酸素投与が開始された.血液検査,胸部XPを施行し,BNPの上昇あり心不全として利尿剤を投与した.その後も自覚症状に乏しいもの,低酸素血症が続くため,投与開始7日目に胸部造影CT施行.両側肺に間質主体のスリガラス陰影を認め,臨床経過からTS-1による薬剤性間質性肺炎が疑われた.同日TS-1の内服を中止.呼吸器内科にコンサルトし,ステロイド静注療法(mPSL 40 mg×3回/day)を開始した.しかし,投与開始10日目未明,急激に呼吸状態が悪化しNPPV導入.抗菌薬(メロペネム)の併用とセミパルス療法(mPSL 500 mg/day)を追加した.しかし治療に反応せず、縦隔気腫まで合併し、投与開始12日目(入院第23病日)午前,死亡となった.TS-1による薬剤性肺炎の発症頻度は0.3%とされる.TS-1の副作用のなかで非小細胞肺癌では間質性肺炎が他の癌腫に比べ発現しやすいといわれている。 TS-1の副作用に薬剤性肺炎があることを念頭に置き,投与初期は慎重な対応が必要であると考えられた. |
索引用語 | TS-1, 間質性肺炎 |