セッション情報 一般演題

タイトル

診断的ESDにて確定診断が得られたSMT様早期胃粘液癌の1例

演者 古森 正宏(九州大学 臨床放射線科)
共同演者 松浦 秀司(九州大学 臨床放射線科), 鶴丸 大介(九州大学 臨床放射線科), 川波 哲(九州大学 臨床放射線科), 宇都宮 尚(古賀病院21 胃腸科), 高野 平八郎(高野胃腸科), 本田 浩(九州大学 臨床放射線科)
抄録 今回我々は、SMTの形態を呈する早期胃粘液癌の確定診断に対し診断的ESDが有用であったので報告する。症例は60歳台、男性。検診異常のため近医にてGIFを施行したところ、胃前庭部大弯に径13mmのSMT、前庭部後壁に径20mmの平盤状隆起を指摘され、両者の精査加療目的にて当科紹介入院となった。当院再検でのGIFでは、前庭部大弯のSMTは正常粘膜により覆われた山田1型隆起で、表面に明らかな陥凹や滲出物の付着は認めなかった。EUSでは、第2層深部から第3層中層に限局する境界明瞭な低エコー腫瘤として描出され、内部エコーは比較的均一な低エコー腫瘤で腫瘤辺縁に石灰化と思われる高エコー成分が認められた。SMT頂部から生検を行うも確定診断に至らず、EUSで第3層深部が保たれていたためESD可能と判断し、前庭部後壁の平盤状隆起に対するESD時にSMTに対しても診断的ESDを施行した。切除病理診断は、前庭部大弯のSMTは深達度smの高分化型腺癌で大量のmucin poolを伴っており粘液癌と診断された。前庭部後壁の平盤状隆起は腺腫であった。胃粘液癌は全胃癌の3%を占める稀な組織型であるが、ことに早期粘液癌は極めて稀で、全胃癌の0.55%以下の頻度と報告されている。粘液癌はSMT様胃癌の形態を呈することが多いため、内視鏡による生検の正診率は20%程度である。一方、EUS、MDCTによる断層画像も、SMTの内部、辺縁性状の評価や石灰化成分の検出などに有用であるが、現状では決定的な鑑別手法ではない。従って胃粘液癌の術前診断は苦慮することが多い。本症例は肉眼的には非特異的なSMTの所見であり、生検でも確定診断に至らなかった。しかし、EUSの所見からESD可能と判断できたため、total biopsyによる確定診断を得ることができた。術前診断困難なSMT様隆起において、EUSで第3層深部が保たれているならば、total biopsy目的のESDも選択肢の一つとして検討すべきと考えられた。
索引用語 診断的ESD, 早期胃粘液癌