セッション情報 シンポジウム 「ESDの治療成績向上をめざして」

タイトル

胃癌に対するESDの適応についての検討

演者 島岡 俊治 (南風病院 消化器科)
共同演者 松田 彰郎(南風病院 消化器科), 仁王 辰幸(南風病院 消化器科), 政 幸一郎(南風病院 消化器科), 鳥丸 博光(南風病院 消化器科), 田代 光太郎(南風病院 消化器科), 新原 亨(南風病院 消化器科), 西俣 嘉人(南風病院 消化器科), 西俣 寛人(南風病院 消化器科), 田中 貞夫(南風病院 病理科)
抄録 ESDの普及により胃癌に対する内視鏡治療はガイドライン病変のみではなく,より大きな病変に対しても積極的に内視鏡治療が行われている.当院では2003年7月にESDを導入しこれまでに胃癌310症例344病変(ガイドライン病変251病変,適応拡大病変75病変,適応外病変19病変)に対してESDを施行した.一括切除率は94.8%(ガイドライン病変95.2%, 適応拡大病変93.3%, 適応外病変94.4%)と適応拡大病変の治療成績もガイドライン病変に比べ遜色のない結果であった.ただしこれらは病理組織学的検索後に判定したものであり,術前にはガイドライン病変あるいは適応拡大病変と診断され,術後の病理学的検索で適応外病変と診断された例が9例みられた.多くは大きな病変の一部が粘膜下浸潤をきたしていたために術前診断が困難であったものである.今回切除標本を用い,腫瘍径と深達度,脈管侵襲,リンパ節転移について調べ,ESDの適応拡大について検討した.対象は当院で切除された分化型胃癌のうちULを伴わない平坦型(IIa,IIb,IIcおよび混合型)401病変を腫瘍径によってA(20mm以下)275病変,B(21-30mm)67病変, C(31-50mm)41病変, D(51mm以上) 18病変のグループに分けた.A, BにおいてSM2以深浸潤率はそれぞれ6.5%, 16.4%であった.C,DにおけるSM浸潤率は51.2%, 61.1%,リンパ管侵襲は3.0%, 6.0%, 24.4%,27.8%.静脈侵襲は1.5%, 4.5%, 12.2%, 11.1%,リンパ節転移(手術症例のみ)は7.0%, 16.1%, 18.5%, 20.0%であった.以上より適応拡大の基準に照らし合わせると適応外となるのはA, B, C, Dそれぞれ6.5%, 26.9%, 53.7%, 61.1%であった.(結論)ESDの普及により大きな病変に対する内視鏡治療が可能になったといえるが,ULを伴っていない平坦型病変であっても3cm以上の病変は高率に粘膜下浸潤あるいは脈管侵襲を伴っていた.患者の負担を軽減するためにも腫瘍径の大きな病変のESDの適応を決める際にはより慎重に,また追加切除の可能性も考慮し十分なインフォームドコンセントのもと行う必要がある.
索引用語 ESD, 胃癌