セッション情報 一般演題

タイトル

急性虫垂炎を併発した虫垂胚細胞カルチノイドの1例

演者 大場 太郎(福岡歯科大学 総合医学講座 外科学分野)
共同演者 植田 茂(福岡歯科大学 総合医学講座 外科学分野), 園田 英人(福岡歯科大学 総合医学講座 外科学分野), 渡邊 昭博(福岡歯科大学 総合医学講座 外科学分野), 鴻江 俊治(福岡歯科大学 総合医学講座 外科学分野)
抄録 【はじめに】非定型的な虫垂炎を併発した虫垂カルチノイド(胚細胞型)の1症例を経験したので報告する。【症例】症例は64歳、男性。主訴は腹痛と下痢。数日前より腹痛があり当院を受診、入院した。入院時、体温は37.3℃、WBC 15500、下腹部正中に圧痛を認めたが、腹膜刺激症状は軽微、腫瘤は触れなかった。腹部X線写真にて回腸のガス像と少数の二ボー、腹部エコーおよびCTにて虫垂の腫大を認めず、回腸の腫脹と壁肥厚、少量の腹水が認められた。炎症性腸疾患による二次性のイレウスを疑い、保存的治療を開始した。入院翌日より解熱傾向、WBCは正常化した。しかし、イレウス症状は軽減しなかったため、入院4日目にイレウスチューブを挿入し、腸管減圧を図った。腸管減圧に成功し、入院9日目にイレウスチューブを抜去した。入院13日目より経口摂取を開始した。イレウスチューブからの造影検査と入院16日目の腹部CT再検により回腸の限局的な壁肥厚による回腸狭窄を認め、腫瘍あるいは膿瘍を疑った。診断確定と治療目的にて入院22日目に腹腔鏡手術を施行した。腹腔鏡にて観察すると下腹部で小腸とS状結腸の癒着を認めた。癒着を剥離すると虫垂先端部の腫大を認め、同部が癒着の原因と考えられた。急性虫垂炎と診断した。腹腔鏡下虫垂切除術を施行した。摘出標本の病理組織学的検査により虫垂先端寄りに胚細胞カルチノイドと、虫垂先端に限局した炎症と診断された。杯細胞カルチノイドは通常型カルチノイドに比べて転移・再発が多く予後不良であるから、患者および家族と相談の上、術後47日目に回盲部切除(D3リンパ節郭清)を施行した。【結語】非定型的な症候と検査所見のため、虫垂炎の診断が難しく、さらに、その原因として予後不良の虫垂胚細胞カルチノイドが発見され、珍しくかつ示唆に富む症例であった。
索引用語 虫垂カルチノイド, 急性虫垂炎