セッション情報 研修医発表

タイトル

下部食道malignant GISTの一例

演者 杵嶋 奈々瀬(潤和会記念病院DELIMITER宮崎大学医学部付属病院卒後臨床研修センター)
共同演者 原田  雅子(潤和会記念病院DELIMITER宮崎大学医学部付属病院卒後臨床研修センター), 樋口 茂輝(潤和会記念病院), 谷口 智隆(潤和会記念病院), 黒木 直哉(潤和会記念病院), 岩村 威志(潤和会記念病院), 宮崎 貴浩(潤和会記念病院), 吉山 一浩(潤和会記念病院)
抄録 【症例】今回我々は,まれな食道原発のgastrointestinal stromal tumor(以下GIST)を経験した.患者は60歳男性.2ヶ月前から固形物の嚥下時の違和感を自覚するようになり,嚥下困難となったため,近医にて内視鏡検査を試行された.食道下端に大きなSMT様所見を認めたため,精査加療目的にて当院紹介となった.当院で施行した内視鏡検査では,胸部下部食道から食道胃接合部に至るSMT様の隆起を認め,隆起の内部には潰瘍形成を認めた.胸腹部造影CTでは,食道下部に約80×65×65mmの境界明瞭な腫瘍を認め,内部は不均一に増強され,横隔膜への浸潤が疑われた.胸腹部MRIでは,内部はT2強調画像で不均一な高信号で,辺縁部には被膜様の低信号域も伴っていた.消化管造影検査では,胸部下部~腹部食道に左前壁側を主体とする粘膜下腫瘍を認め,食道は高度に狭窄し,病変の中心部に深い陥凹形成を伴っていた.右開胸下下部食道切除術,腹腔鏡下噴門側胃切除術,横隔膜合併切除を行い,食道胃管吻合で再建した.病変は食道壁全体を占拠する不整な充実性腫瘍であった.組織学的には束状及び渦巻き状配列を示す短紡錘形,多角形の細胞から成り,壊死を伴っていた.核は多染性で,細胞分裂が多く見られ,粘膜下層から外膜まで浸潤していた.免疫染色では,CD34,c-kitはびまん性に中~強陽性,desminは散在性に陽性,α-SMAはごく一部に陽性を呈した.S-100蛋白は陰性であった.腫瘍の大きさやmitosisの所見から、high gradeのGISTと診断した.術後補助化学療法として、メシル酸イマチニブ(グリベック)の内服を行い、厳重に経過観察する方針とした。【考察】消化管GISTの中でも食道原発のGISTの占める割合は5%程度と低く,稀である.食道の粘膜下腫瘍では筋原性腫瘍が多く,GISTは一部に認めるのみで,そのほとんどは食道下部に発生し,悪性度の高いものも少なからず報告されている.特に腫瘍径の大きなもの,mitosisの数が多いもの,壊死を伴うものでは,その多くが原病死している.今回の症例も同様に悪性度の高いものであり,厳重な経過観察が必要と考えた.
索引用語 食道, GIST