セッション情報 シンポジウム 「ESDの治療成績向上をめざして」

タイトル

大腸ESDの治療成績向上を目指して -大腸ESDの治療成績・偶発症に関わる臨床病理学的因子の統計学的解析より-

演者 山口 直之(長崎大学医学部・歯学部病院 光学医療診療部)
共同演者 磯本 一(長崎大学医学部・歯学部病院 光学医療診療部), 西山 仁(長崎大学医学部・歯学部病院 消化器内科), 大仁田 賢(長崎大学医学部・歯学部病院 消化器内科), 竹島 史直(長崎大学医学部・歯学部病院 消化器内科), 水田 陽平(長崎大学医学部・歯学部病院 消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学医学部・歯学部病院 消化器内科), 河野 茂(長崎大学医学部・歯学部病院 第二内科), 宿輪 三郎(長崎大学医学部・歯学部病院 消化器内科)
抄録 【目的】大腸ESDは保険未適応で、胃に比べ難易度が高く穿孔等の偶発症が起こりやすいため、現在でも施行施設は限られている。我々は、当科にて施行した大腸ESD症例を対象に治療成績・偶発症及びそれらに関わる臨床病理学的因子の解析を行った。【方法】2001年5月~2007年11月の間にESDを施行した大腸腫瘍292例(腺腫122例、早期大腸癌170例(m癌143例、sm癌27例))を対象に、以下の3項目について検討を加えた。1)治療成績(一括切除率、一括治癒切除率) 2)偶発症(穿孔、出血)3)一括切除・一括治癒切除・穿孔に関わる臨床病理学的因子の解析 【成績】1 )一括切除率・一括治癒切除率は全体で各々90.1%(263/292)・70.9%(233/292)であった。肉眼型別では各々順に、0-I型は85.3%・79.4%、0-IIa型は80.0%・80.0%、0-IIc型は87.5%・87.5%、LST-Gは92.7%・79.8%、LST-NGは87.1%・79.0%であった。 2 )偶発症は、全体では、穿孔4.1%(12/292)・後出血0.7%(2/292) であった。肉眼型別では、0-I型は穿孔5.9%・後出血2.9%、0-IIa型は穿孔0.0%・出血0.0%、0-IIc型は穿孔25.0%・出血0%、LST-Gは穿孔2.8%・出血0.8%、LST-NGは穿孔4.8%・出血0.0%であった。 3)一括切除に関しては単変量解析で線維化が分割切除の危険因子であった (オッズ比:3.67・95%CI:1.09-12.37・p<0.05)。一括治癒切除に関しては単・多変量解析共に右側結腸(オッズ比:3.77・95%CI:1.39-10.23・p<0.01)及び線維化(オッズ比:4.14・95%CI:1.05-10.73・p<0.05)が非治癒切除の危険因子であった。穿孔に関しては腫瘍径30mm以上(オッズ比:1.04・95%CI:1.01-1.07・p<0.05)及び線維化(オッズ比:9.84・95%CI:3.06-31.63・p<0.001)が危険因子であった。【結論】大腸ESDは大型の腫瘍性病変に対しても高い治癒切除率が得られており、大腸においても有用であると考えられた。大腸ESDの臨床病理学的因子析結果から、線維化病変、右側結腸病変、腫瘍径30mm以上の大型病変が治療困難病変であると考えられた。特に、線維化病変は非治癒切除率・穿孔率ともに有意に高く、腹腔鏡治療など他治療も考慮する必要があると思われた。
索引用語 大腸ESD, 線維化