セッション情報 一般演題

タイトル

心嚢横隔静脈に対し血流改変を行い安全に硬化療法を施行しえた胃静脈瘤の1例

演者 山本 充了(済生会熊本病院 消化器病センター)
共同演者 川崎 剛(済生会熊本病院 消化器病センター), 村岡 正武(済生会熊本病院 消化器病センター), 吉田 健一(済生会熊本病院 消化器病センター), 工藤 康一(済生会熊本病院 消化器病センター), 浦田 淳資(済生会熊本病院 消化器病センター), 上川  健太郎(済生会熊本病院 消化器病センター), 多田  修治(済生会熊本病院 消化器病センター), 安田 剛(済生会熊本病院 画像診断センター)
抄録 胃静脈瘤(Lg-f)は通常、腎静脈系短絡(G-R shunt)を介した左腎静脈を排出路としていることが多く、B-RTO(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration)が有効だが、主排出路が左腎静脈でない場合、通常B-RTOは困難であり、治療に難渋する事もしばしばである。今回われわれは排出路が心嚢横隔静脈であった胃静脈瘤に対し、事前にIVRによる血流改変術を併用することで、安全に内視鏡的硬化療法(EIS)が行えた症例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。症例は57歳、男性。2002年よりC型肝硬変のため近医通院中。2007年、健診の上部消化管内視鏡検査にて食道胃静脈瘤を指摘され、2008年には増大傾向を認めたため、当科へ紹介された。食道静脈瘤(Lm,F2,Cb,RC2)は治療適応と判断し、EISを施行した。その際、3D-造影CTにて胃静脈瘤の血行動態を調べたところ、瘤径は12mm大で、流入路は後胃静脈であった。排出路は横隔静脈系短絡と腎静脈系短絡の2系統であり、主排出路は横隔静脈系短絡を介した心嚢横隔静脈であった。胃静脈瘤はしばらく経過観察していたが、増大傾向を認め、治療適応と思われた。主排出路が大きく、血流も豊富と予想され安全に加療するには、事前の血流制御が不可欠と考えられた。そのためIVR手技にて横隔静脈系短絡のコイル塞栓後に、EISを行う方針とした。2009年1月、右大腿静脈から心嚢横隔静脈を経由してマイクロカテーテルを左下横隔静脈まで挿入し、同静脈に対して金属コイルで永久塞栓術を行った。その翌日、内視鏡的に胃静脈瘤に対し硬化療法を行った。瘤内に71% N-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)を局注し、排出路の血流を停滞させた上で、供血路側に5% ethanolamine oleate(EO)を後胃静脈が描出されるまで血管内に注入した。5日後の造影CT検査にて供血路である後胃静脈を含め瘤の完全な血栓化を確認した。術後の合併症は認められず経過は良好であった。退院後3か月の現在まで再発を認めていない。
索引用語 胃静脈瘤, 心嚢横隔静脈