セッション情報 一般演題

タイトル

造影CTで上行結腸癌との鑑別が困難であった閉塞性腸炎、大腸憩室炎の一例

演者 牟田 和正(福岡県)
共同演者 原口 和大(福岡県), 吉村 大輔(福岡県), 淀江 賢太郎(福岡県), 落合 利彰(福岡県), 壁村 哲平(福岡県)
抄録 症例は55歳男性、うつ病に対し近医で内服加療中。平成21年3月19日早朝より上腹部痛が出現し、その後嘔吐を認めた。疼痛は、徐々に右下腹部に限局した痛みとなり、改善がないため近医を受診し、虫垂炎の疑いで、当科紹介入院となった。来院時、37.8度の発熱と右下腹部に限局した圧痛を認め、WBC14600/μl、CRP0.3mg/dlの炎症所見を認めた。腹部単純X線で明らかなniveau所見は認めないものの、上行結腸近位部の著明な拡張と便の貯留を認めた。腹部造影CTでは、上行結腸中部に増強効果を伴う全周性の壁肥厚と、腸間膜リンパ節腫脹を認め、その口側の回盲部腸管の著明な拡張所見から、上行結腸癌による腸閉塞が疑われた。絶食ならびにCMZ2g/日の投与を行い、閉塞機転の確認目的で第3病日に大腸内視鏡検査を施行した。上行結腸中部を中心に全周性の浮腫と壁肥厚が著明であり、右側結腸には憩室の多発縦列を伴っていた。口側への内視鏡の挿入は容易で、盲腸部には亜全周性の広範な輪状潰瘍を認めるも、抗酸菌を含む細菌培養、生検所見に特異な異常は認めなかった。以上より、大腸憩室炎により閉塞性腸炎を来たしたものと考え、CMZ2g/日の投与を継続した。症状・所見ともに速やかに改善し、1週間後の大腸内視鏡検査では上行結腸の浮腫・肥厚の改善を認めた。閉塞性腸炎の原因としては腫瘍性病変が一般的であり、本例のような大腸憩室炎によるものは稀と考え若干の文献的考察を加え報告とする。
索引用語 閉塞性腸炎, 大腸憩室炎