抄録 |
要旨 今回我々は比較的稀な直腸GISTを経験したので文献的考察を加えて報告する.症例は61歳,男性. 下痢を主訴に近医を受診し,大腸内視鏡検査で直腸に隆起性病変を指摘され紹介となった.当院の内視鏡検査では直腸Rbに約10mm大,黄白色調の粘膜下腫瘍様の隆起性病変を認め,カルチノイド腫瘍と診断,生検されたが腫瘍を検出できなかった.EUS(脱気水法,20MHz)では直腸壁は7層構造に分離,腫瘍は第4層から連続する低エコー腫瘤として描出され,内部はモザイク状であった.第1,2層は保たれ,腫瘍の主座は第3層であった.以上の所見より,カルチノイド腫瘍は否定され,内輪筋由来の筋原性腫瘍と診断した.腹部US,CT検査ではリンパ節転移,遠隔転移の所見は認めなかった.患者の強い希望により確定診断を目的としESDを行った.腫瘤全体は偶発症なく容易に核出された。切除標本:肉眼所見は白色調球形の硬い腫瘤であった。病理組織学的所見では腫瘍は大きさ13×10mm大で粘膜下層に存在し,紡錘形細胞が束状索状に密に増殖していた.免疫組織学的所見ではc-kit,CD34,α-SMA,HHF35,caldesmon,calponin,vimentin陽性で,Ki-67 labeling index 1%であった.Mitosisは認めなかったが細胞密度が高くGIST,borderline malignancyと診断された.1 腫瘍径は小さく,垂直断端陰性であるがburning effectによる一部水平断端が判定不能であること,2 リスク分類でborderline malignancyであることを理由に厳重経過観察している.GISTの概念確立後にNissenらが行った検討では,消化管原発GIST 288症例の内訳は胃59%,小腸34%,大腸6%と大腸は比較的稀である.本症例はEUSで内輪筋由来の筋原性腫瘍を疑い,ESDで病理組織学的に確定診断し得た. |