抄録 |
症例は、14歳の男性。平成20年9月下痢、血便が出現し近医受診したところ直腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断されメサラジン1500mgにて治療を開始された。その後はメサラジン2250mgまで増量され症状寛解していた。2009年1月中旬頃腹痛、血便出現すると同時に胸痛も出現したために近医受診し、ホルター心電図、胸部X-P等検査するも異常は指摘されなかった。その後、症状改善せず38度台の発熱もあるため2月に当科受診となった。血液検査にてWBC9800/μg、Hb9.5g/dl、CRP15.8mg/dlと炎症反応と貧血を認めたため緊急入院となった。しかし、S状結腸内視鏡、無前処置注腸造影検査では左側結腸に軽度活動期の所見のみであったため炎症の原因は腸管病変以外にもあると考えられた。吸気時や体動により胸痛が増悪するため胸部X-P施行したところ心拡大があり、胸部CTでは胸膜の肥厚と胸水貯留、心嚢液貯留を認めた。心臓超音波検査においても心臓周囲に22mmの心嚢液貯留を認めIVCはやや拡張しており呼吸性変動が弱くなっていた。胸膜炎、心膜炎が炎症反応上昇の主な原因と考えられ、抗生剤を一週間投与し経過をみるも改善なく、血液検査にて感染や膠原病を示唆する検査所見は認められなかった。潰瘍性大腸炎に合併した胸膜炎、心膜炎と考えPSL60mg投与を行った。PSL投与翌日には胸痛は著明に改善し、PSL投与12日目に施行した心臓超音波検査では心嚢液はほぼ消失していた。その後はPSLを徐々に漸減していき退院となった。今回の胸膜炎、心膜炎の原因としてメサラジンの副作用も疑われたがメサラジンは入院時より中止し一週間経過しても症状改善なかったため潰瘍性大腸炎の腸管外病変によるものと考えられた。潰瘍性大腸炎の腸管外病変としての胸膜炎、心膜炎は極めてまれであり、PSLが著効し改善が得られた症例を経験したため若干の文献的考察を加えて報告する。 |