セッション情報 一般演題

タイトル

肝障害を伴う食道癌症例に対する二期的手術の検討

演者 久松 雄一(九州大学大学院 消化器・総合外科)
共同演者 森田 勝(九州大学大学院 消化器・総合外科), 佐伯 浩司(九州大学大学院 消化器・総合外科), 掛地 吉弘(九州大学大学院 消化器・総合外科), 吉永 敬士(九州大学大学院 消化器・総合外科), 中ノ子 智徳(九州大学大学院 消化器・総合外科)
抄録 【はじめに】食道癌に対する食道切除・再建術において、肝硬変などの全身基礎疾患合併例、胃切除後の結腸再建などのハイリスク症例では、肺合併症や縫合不全等の合併症が発生しやすく重篤化しやすい。我々の施設では、ハイリスク症例に対して安全性を考慮した二期的手術を施行している。今回我々は、肝障害を伴う食道癌に対する二期的手術の有用性について検討した。【対象と方法】2005年から2008年までの食道癌手術症例のうち、肝障害のために二期的手術を行った5例を対象に、臨床病理学的因子、術前肝障害の重症度、術式および術後合併症などについて検討を行った。【結果】1.術前評価:患者の平均年齢は65.4歳で、すべて男性であった。病変占拠部位はすべてMtであり、病理学的進行度ではStage 0が1例、Stage Iが1例、Stage IIが1例、Stage IIIが2例であった。術前合併症としての肝障害は4例がアルコール性肝硬変、1例がHCVによる慢性肝炎によるものだった。Child-Pugh分類ではgrade Aが4例、grade Bが1例であり、肝障害度分類はgrade Aが3例、grade Bが2例であった。2.術式:5例はすべて、一期目手術で食道切除術および食道瘻空腸瘻造設術を、二期目手術で食道再建術を行った。一期目と二期目の手術間隔の平均は38日、再建臓器はすべて胃が用いられ、再建経路は胸骨前が4例、胸骨後が1例であった。またリンパ節郭清は4例が2領域、1例が3領域であった。一期目手術および二期目手術での手術時間の平均はそれぞれ7時間11分と6時間59分であり、術中出血量の平均はそれぞれ512gと1294gであった。3.術後経過:術後合併症としては、一期目手術後は認めなかった。二期目手術後に縫合不全が2例生じ、うち1例は重篤化することなく保存的に軽快したが、1例は大胸筋弁による被覆術を行った。5例すべてにおいて、重篤な全身合併症、肝機能悪化または術死などはなく、全例自宅退院となった。【まとめ】肝障害伴った食道癌症例に対する二期的手術は、術後合併症のリスクを低減する有用な術式と考えられた。
索引用語 食道癌, 肝障害