セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
粘膜下腫瘍として10年の経過観察の後に手術を施行しリンパ球浸潤性髄様胃癌の診断を得た1例
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演者 |
宮崎 充啓(飯塚病院 外科) |
共同演者 |
調 憲(飯塚病院 消化器外科), 安部 智之(飯塚病院 外科), 三好 修(飯塚病院 外科), 近藤 潤也(飯塚病院 外科), 櫻井 眞人(飯塚病院 外科), 西田 康二郎(飯塚病院 外科), 長家 尚(飯塚病院 外科) |
抄録 |
胃癌の中には粘膜下腫瘍の形態を呈し、診断が困難で治療までに長期間を要する症例がある。粘膜下腫瘍の形態を呈し、10年の経過観察の後に手術を施行し胃癌の診断を得た1例を経験したので報告する。症例は80歳代男性。1994年の上部消化管内視鏡で、胃体上部に小さな潰瘍を伴った粘膜下腫瘍様の隆起病変を認め、当院外来で粘膜下腫瘍として定期的に内視鏡で経過観察されていた。2004年5月上旬に吐血に対し緊急内視鏡を施行、胃体上部の粘膜下腫瘍様病変の潰瘍部より出血を認めた。内視鏡的な肉眼形態は10年前と変化はなかったが、出血があり手術を施行することとなった。一時的に止血術を施行後、EUSを用いて術前精査を施行し。EUS所見より間葉系腫瘍というよりも胃癌を疑われ、同月中旬に噴門側胃切除術及びリンパ節郭清を施行。病理組織検査の結果、リンパ球浸潤性髄様胃癌、pT2, pN0, sH0, sP0でfStage IBと診断。リンパ球浸潤性髄様胃癌は、比較的稀で、その頻度は胃癌全体の約1.1~4.0%とされている。本疾患の形態学的な特徴として粘膜下腫瘍様の形態をとることが多く、間葉系腫瘍との鑑別が重要であり、内視鏡所見上は、潰瘍形成・粘膜面の微細な変化などが鑑別点として挙げられるが、その診断は必ずしも容易ではない。EUSは胃壁内における腫瘍の主座、形状、発育様式、大きさなどの判断が可能であり、診断上有用であるという報告が増えている。自験例でも、手術により確定診断が得られるまでに10年を要したが、術前に施行したEUSでは確定診断を得ることは不可能だったが、胃癌を疑う診断を得ることができ、結果として胃癌に対する手術を施行した。中心部に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍の中には、頻度は極めて低いものの特殊な形態を有し長い経過を示す胃癌もあり、この様な病変にはEUSによる経過観察も不可欠であると考えられた。 |
索引用語 |
リンパ球浸潤性髄様胃癌, 粘膜下腫瘍 |