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地域中規模病院での75歳以上の高齢者におけるHelicobacter pylori感染と治療の現状

演者 末廣 剛敏(新中間病院 外科)
共同演者 矢毛石 陽一(新中間病院 外科), 實藤 健作(新中間病院 外科), 境 文孝(新中間病院 内科), 松崎 浩一(新中間通谷クリニック), 豊川 毅(新中間病院 内科), 潮下 敬(新中間病院 内科), 奥平 恭之(新中間病院 外科), 狩野 律(新中間病院 外科), 嶺 博之(新中間病院 外科)
抄録 【はじめに】Helicobacter pylori(HP)は胃潰瘍の原因の大半を占め、日本ヘリコバクター学会より診断と治療のガイドラインが刊行されているが、その除菌療法は十分に普及していない。当院は周囲に多くの老健施設や老人ホームが点在する一般100床療養型50床の中規模病院である。当院における75歳以上の高齢者におけるHP感染と治療の現状について報告する。【対象】2006年8月から2009年3月までの2年8ヶ月間にHP感染の有無を診断した461例を対象とした。HP感染および除菌、内視鏡所見、抗潰瘍薬、NSAIDS内服の関係について75歳以上の長寿群135例と74歳以下の対照群326例に分け比較検討した。HP感染の有無は生検にて、除菌の結果は尿素呼気法にて確認した。【結果】HP陽性162例、陰性299例で、対照群326例中HP陽性132例(40.5%)、除菌療法施行56例(42.4%)、除菌率80%(20/25)であったのに対し長寿群135例中HP陽性30例(22.2%)、除菌療法施行6例(20.0%)、除菌率は80%(4/5)と長寿群においてHP陽性率、除菌療法施行率が有意に低かった。長寿群には抗血小板薬内服中による生検未施行例が多いことが原因の一つと考えられたが、各医師間での除菌療法施行率にも大きな差があり全く除菌療法を施行しない担当医師もみられた。低容量アスピリンを含むNSAIDS内服症例は62例(13.4%)で長寿群(34例25.2%)は対照群(28例8.6%)に比し有意に多かった。HP陽性もしくはNSAIDS内服症例の潰瘍における割合は長寿群72.7%(16/22)対照群71.6%(53/74)全体で71.9%(69/96)であった。HP陽性群において長寿群、対照群ともにNSAIDS内服により潰瘍症例の増加は認めなかった。抗潰瘍薬に関しては長寿群対照群ともにPPI内服により潰瘍発生率が1/2に減少したが、HP陽性例ではPPIの効果は見られなかった。【まとめ】当院におけるHP除菌率は全体で162例中62例(38.3%)であり、長寿群(6/30,20.0%)は対照群(56/132,42.4%)に比し有意に低率であった。その原因として抗血小板薬内服中による生検未施行例が長寿群で多いことと、担当医の除菌に対する認識不足が大きな原因と考えられた。
索引用語 Helicobacter pylori, 高齢者