セッション情報 | 要望演題4 「進行・再発大腸癌に対する治療戦略」 |
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タイトル | 腹膜播種を伴う大腸癌の外科治療成績 |
演者 | 井上 重隆(九州大学臨床・腫瘍外科) |
共同演者 | 植木 隆(九州大学臨床・腫瘍外科), 西岡 泰信(九州大学臨床・腫瘍外科), 真鍋 達也(九州大学臨床・腫瘍外科), 難波江 俊永(九州大学臨床・腫瘍外科), 壬生 隆一(九州大学臨床・腫瘍外科), 田中 雅夫(九州大学臨床・腫瘍外科) |
抄録 | 【緒言】大腸癌治療ガイドラインでは腹膜播種はP1では原発巣とともに切除が好ましく、P2では切除を考慮すると記載されている。しかしながら、腹膜播種の程度やその他の予後因子により切除後の予後には差があると思われる。当科では、術前腹膜播種が疑われる症例や非治癒切除となる症例に対しても可能な限り原発巣、転移、播種巣の切除を行ってきた。今回、腹膜播種を伴った大腸癌手術症例における手術療法の有用性について検討した。【対象と方法】1992年から2007年に当科で行った大腸癌に対する手術986例中、腹膜播種陽性症例における背景因子、切除術式、根治度、予後について検討した。【結果】腹膜播種陽性症例は53例(5.3%)にみられた。原発部位は盲腸9例、上行結腸11例、横行結腸2例、下行結腸4例、S状結腸15例、直腸S状部6例、直腸Ra5例で、直腸Rbと肛門管の癌はなかった。腹膜播種の程度はP1:12例(肝転移併存7例、単独腹膜転移5例)、P2:18例(肝転移併存11例、遠隔転移併存4例、単独腹膜転移5例) P3:23例(肝転移併存14例、遠隔転移併存3例、単独腹膜転移6例)で、肝もしくは遠隔転移の併存率はP1:58%、P2:72%、P3:74%と高かった。原発巣は46例(87%)で切除可能で、リンパ節郭清はD0を1例、D1を14例、D2を12例、D3を5例に行った。病理学的深達度はss/a:20例、se:24例、si:8例と多くは漿膜浸潤を認めた。腹膜播種症例全体の3年、5年生存率はそれぞれ20.1%・13.4%で、P1では33%・33%、P2では0%・0%、P3では20%(3年生存率のみ)であった。肝転移や腹膜転移のない例の5年生存率は45.7%と比較的良好であったが、肝転移や遠隔転移のある症例では10.4%と不良であった。【結語】腹膜播種を有する大腸癌の予後は不良であるが、肝転移や遠隔転移を有さない症例では比較的良好な予後を得られた。新規抗がん剤の採用による化学療法の進歩に伴い更なる生存率の向上が望まれ、腹膜播種症例に対する外科治療は今後も重要さを増すと考えられた。 |
索引用語 | stageIV大腸癌, 腹膜播種 |