セッション情報 | 要望演題10 「門脈圧亢進症治療の新たな展開」 |
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タイトル | 肝硬変による脾機能亢進症に対する治療戦略 -部分的脾塞栓術における至適脾梗塞体積からの検討- |
演者 | 林 洋光(熊本大学大学院 消化器外科学) |
共同演者 | 別府 透(熊本大学大学院 消化器外科学), 堀野 敬(熊本大学大学院 消化器外科学), 小森 宏之(熊本大学大学院 消化器外科学), 増田 稔郎(熊本大学大学院 消化器外科学), 岡部 弘尚(熊本大学大学院 消化器外科学), 太田尾 龍(熊本大学大学院 消化器外科学), 高森 啓史(熊本大学大学院 消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大学大学院 消化器外科学) |
抄録 | 脾機能亢進症の治療法としては、脾臓摘出術や部分的脾塞栓術(PSE)が主に行われている。しかし、これらの手技をどのような症例で選択するかはコンセンサスが得られていない。当科では、肝硬変に伴う脾機能亢進症に対して、脾臓摘出術よりもPSEを積極的に行ってきた。脾機能亢進症に対してPSEを行った89例において(平均脾梗塞率76%)、血小板数は術前値4.7±1.4(×104/μL)から1ヶ月後13.0±6.2(×104/μL)、1年後10.8±3.7(×104/μL)と著明な血小板増加効果が得られている。また、PSE後の重篤合併症を14.6%で認めた。われわれはこれまでに、肝硬変例に対するPSEの長期的な血小板増加効果を規定する因子が、従来の脾梗塞率ではなく脾梗塞体積であることを明らかにし、PSEの1年後に十分な血小板増加量を得るためには脾梗塞体積388ml以上が必要であることを報告した(Hayashi et al. J Gastroenterol Hepatol, 2007)。さらに、肝硬変例に対するPSE後の合併症危険因子について解析を行い、Child Cと脾梗塞体積540ml以上が危険因子であることを報告した(Hayashi et al. Br J Surg, 2008)。これらの結果から効果的かつ安全なPSEの至適脾梗塞体積は388ml~540mlであると考えられた。しかし、中には脾体積が388ml以下の症例も存在する。現在当科では、脾腫が軽度の症例(脾体積<388ml)や長期間の確実な血小板増加効果が必要な症例では腹腔鏡下脾臓摘出術を選択し、肝硬変による脾機能亢進症に対してIVRと手術を柔軟に使い分けている。本発表では、肝硬変に伴う脾機能亢進症に対する当科での治療戦略を呈示し、PSEと脾臓摘出術の使い分けについてわれわれの考え方を示す。 |
索引用語 | 部分的脾塞栓術, 脾機能亢進症 |