セッション情報 研修医発表

タイトル

小腸内視鏡検査にて術前に診断し切除した出血性メッケル憩室の一例

演者 三宮 一朗(宮崎大学腫瘍機能制御外科)
共同演者 内山 周一郎(宮崎大学腫瘍機能制御外科), 金子 裕美(宮崎大学腫瘍機能制御外科), 日高 秀樹(宮崎大学腫瘍機能制御外科), 早川 彰一郎(宮崎大学腫瘍機能制御外科), 西田 卓弘(宮崎大学腫瘍機能制御外科), 押川 勝太郎(宮崎大学内科学講座循環体液制御学), 千々岩 一男(宮崎大学腫瘍機能制御外科)
抄録 メッケル憩室は先天性の憩室で、胎生期の卵黄管の近位端が遺残したものであり全人口の約2~3%に発生する.多くは無症状で経過するが,15~30%で憩室炎や腸重積,出血などの合併症を併発するといわれており、特に成人では術前に原因であるメッケル憩室を診断することは一般に困難である.今回,ダブルバルーン小腸内視鏡検査で確認し、腹腔鏡下で切除したメッケル憩室の一例を経験したので報告する.症例は19歳男性で持続する血便ののちにショック状態となり当院救急部を受診.Hb:7.5g/dlと著明な貧血の所見を認め、精査目的で当院内科に緊急入院した.上・下部消化管内視鏡検査では明らかな出血源となる病変を認めなかった.ダブルバルーン小腸内視鏡検査を行いメッケル憩室を確認したが,検査時に出血は認めなかった.点墨とマーキングを行い、待期的手術を考慮していたが、その2日後に下血と意識消失が出現し,ショック状態となった.緊急に血管造影検査を施行したが,メッケル憩室のほかに出血源となる病変を特定できず,手術目的で当科へ転科した.腹腔鏡下で観察を行ったところ、回盲部よりおよそ115cmの部位に腸間膜対側に突出するメッケル憩室を確認した.これを鉗子で把持した状態で体外に引き出した.電気メスで切離して観察したところ,粘膜面に露出血管があり,これが出血の原因と考えられた.念のために切除断端部より内視鏡を挿入してほかに出血源や出血を認めないことを確認した.切除標本では組織学的に胃底腺を伴った異所性胃粘膜から構成されており、一部に再生上皮を伴った潰瘍を認めた.術後の経過は良好であった.原因不明の消化管出血症例では,メッケル憩室も鑑別の一つとして念頭に置き,可能ならば小腸内視鏡検査を行うことが診断・治療に有用であると考えられた.
索引用語 メッケル憩室, 小腸内視鏡