セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | グルカゴン投与により低血糖が誘発されたインスリノーマの一例 |
演者 | 立花 雄一(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科) |
共同演者 | 藤森 尚(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 中村 太一(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 松尾 享(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 大野 隆真(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 河邉 顕(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 五十嵐 久人(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 伊藤 鉄英(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 高柳 涼一(九州大学病院内分泌糖尿病内科病態制御内科学), 石神 康生(九州大学病院放射線科), 上田 純二(九州大学病院臨床腫瘍外科), 中村 雅史(九州大学病院臨床腫瘍外科), 田中 雅夫(九州大学病院臨床腫瘍外科) |
抄録 | 症例は67歳男性.主訴は意識消失発作.平成20年健診の胃透視検査で異常を指摘されたため,上部消化管内視鏡検査を施行.検査の前処置としてグルカゴンを筋注された.検査中は問題なかったが,検査後突然意識消失.血糖値20mg/dlと著明な低血糖を認めた.低血糖の原因精査のため当科紹介.CT検査にて膵頭部腫瘤,血液検査でインスリン高値が指摘され,インスリノーマを疑われ入院となった.入院時,身長152cm,体重50.1kg,BMI 21.7.意識清明,冷汗なし.急激な体重減少・増加の既往なく,今回のエピソード以外に意識消失発作の既往なし.血液検査では空腹時血糖 79mg/dl,インスリン 2.9μU/ml,Fajas index 0.34,グルカゴン 61pg/ml.ASVS(Arterial Stimulation Venous Sampling)ではtumor stainは認めたが,カルチコール投与にてインスリンの上昇なし.絶食グルカゴン負荷試験では開始37時間後で血糖値が50mg/dlを下回り,グルカゴン投与10分後にはIRIは1525μU/mlと著明に上昇した.75gOGTTも施行し30分後にはIRI 537μU/mlと上昇,その後は低血糖著明で中途終了した.CT,MRIで膵頭部に径2cm大の早期に濃染される境界明瞭な腫瘤を認めた.入院中の血糖値は空腹時60~70mg/dl,午前40~50mg/dl,午後80~100mg/dlで推移し,負荷試験以外で低血糖症状をきたすことはなかった.インスリノーマの確定診断には至らなかったが手術適応と判断し, 10月1日当院臨床腫瘍外科にて幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行.術後低血糖は改善し,グルカゴン負荷試験でもIRIの過剰分泌反応は消失した.インスリノーマは膵の機能性内分泌腫瘍の中では最も頻度が高い腫瘍で通常低血糖症状で指摘されるが,診断にはWhippleの三徴,Fajas index,インスリン分泌刺激試験,CT,MRIなどの画像診断およびASVSに加え,絶食グルカゴン負荷試験が有用と考えられている.本症例は絶食グルカゴン負荷試験は陰性であったがグルカゴン投与や75gOGTTでインスリンの過剰分泌が認められ,インスリノーマを疑い手術により確定診断が得られ,低血糖も改善した.若干の文献的考察を含め報告する. |
索引用語 | インスリノーマ, 絶食グルカゴン負荷試験 |