セッション情報 | 研修医発表 |
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タイトル | 進行食道癌手術当日に心室細動を発症した一例 |
演者 | 下川 能(福岡東医療センター 外科) |
共同演者 | 野添 忠浩(福岡東医療センター 外科), 松隈 哲人(福岡東医療センター 外科), 江崎 卓弘(福岡東医療センター 外科), 田中 宗浩(消化器科), 柳 統仁(循環器科) |
抄録 | 【はじめに】食道癌術後合併症の一つとして不整脈が知られている。今回われわれは進行食道癌の手術当日に致死的不整脈である心室細動を発症した症例を経験したので報告する。【症例】81歳男性。平成20年3月より嚥下障害出現。症状が増悪するため7月4日近医を受診し、胃内視鏡検査の結果、胸部中部食道に隆起性の病変を認めたため当院を紹介された。精査結果Stage3(T3N2)の進行食道癌と診断され手術目的で外科転科となった。術前心電図、心エコーで異常所見は認めず、9月2日、食道切除再建術(胃管・胸骨後経路)を施行した(手術時間6時間10分、出血量350g)。術後ICU入室、当日夜に突然心電図モニター上心室細動を認めた。このため心臓マッサージ、キシロカイン静注等の蘇生処置を行い不整脈は改善した。心室細動の原因はモニターの記録から冠攣縮性狭心症が考えられた。その後カルシウム拮抗薬、マグネシウム投与などで不整脈治療をおこない以後再発は認めなかった。外科退院前に心臓カテーテル検査を行ったが冠動脈には治療を要するほどの異常所見は認められなかった。心臓以外の術後経過は良好であり、狭心痛の訴えもなかった。【考察とまとめ】術後冠攣縮性狭心症の発症原因として、1麻酔の影響、2カテコラミン等血管作動薬、 3迷走神経反射、 4硬膜外麻酔、 5βブロッカー等が考えられる。本症例は蘇生と不整脈治療によりその後良好に経過し、慢性期にカルシウム拮抗剤を中止しても狭心痛はみられず、急性期の心電図変化は手術ストレスによるものが考えられた。冠攣縮性狭心症やそれに伴う心室細動は術後合併症として術前に予測することが困難であり、術中・術後においては本疾患を念頭においた十分な管理が必要と思われる。【結語】進行食道癌術後にモニター心電図で著明なST上昇と心室細動を認め冠攣縮性狭心症が疑われた一例を経験した。術前評価で冠攣縮狭心症発症を予測することは困難であり、食道癌術後にはICUなどにおける十分な周術期管理が必要と考えられる。 |
索引用語 | 食道癌, 冠攣縮性狭心症 |