| 抄録 |
患者は40歳, 女性.下痢,新鮮血下血,口内炎,右手背の腫張と疼痛を主訴に来院し,精査にて全大腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断した. 右手背に関しては壊疽性膿皮症と判断した.メサラジン2250mg/日とコハク酸プレドニゾロンナトリウム40mg/日を開始.右手背は自潰排膿したが,腹部症状や口内炎とともに次第に改善し瘢痕化した. PSLを20mg/日まで減量したところ,腹部症状と右手背の症状が再燃したためコハク酸プレドニゾロンナトリウムを40mg/日まで増量するとともに顆粒球除去療法を開始した.開始時の腹部エコーとCTにて門脈臍部に血栓を認めたため血栓溶解療法も併用した.その後腹部症状, 壊疽性膿皮症,門脈血栓は消失した.潰瘍性大腸炎にはさまざまな腸管外合併症を伴うことが知られている.皮膚症状の一つとして知られる壊疽性膿皮症は,有痛性紅斑,小水疱,膿疱などで発症し,短期のうちに蚕食性潰瘍を形成する原因不明の皮膚症である.また潰瘍性大腸炎には血栓症が合併することがあるが,その原因は炎症に伴う凝固能亢進や線溶低下と考えられている.本症例はこの壊疽性膿皮症と門脈血栓を合併した一例であり,若干の文献的考察を加えて報告する. |