セッション情報 一般演題

タイトル

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後に胃壁内気腫を生じた1症例

演者 向井 康二(北九州市立医療センター 消化器内科)
共同演者 名本 真章(北九州市立医療センター 消化器内科), 富田 洋介(北九州市立医療センター 消化器内科), 杣田 真一(北九州市立医療センター 消化器内科), 本田 邦臣(北九州市立医療センター 消化器内科), 井原 裕二(北九州市立医療センター 消化器内科), 三澤 正(北九州市立医療センター 消化器内科)
抄録 症例は78歳男性。健診目的の上部消化管内視鏡検査で胃前庭部後壁にcType 0 IIc+IIa病変を指摘され、精査加療目的で平成20年11月当科紹介受診。術前の診断ではSM浸潤の可能性も否定できない病変であったが、御本人の希望もありに胃ESDを施行することとなった。平成21年2月4日に施行。術中SM浸潤の可能性も考え、筋層直上をフラッシュナイフで剥離した。術中内視鏡的には明らかな穿孔や筋層の挫滅は認めず、病変は一括切除し(切除径53×50mm、病変径30×28mm)、約70分で処置を終了した。術翌日早朝から、38℃台の発熱と心窩部痛出現。触診で心窩部痛に一致する筋性防御、反跳痛を認めた。遅発性胃穿孔を疑い腹部単純CT検査を施行した。Free airは認めなかったが、胃前庭部の著明な壁肥厚と胃壁内に限局するairを認めた。貫壁性の穿孔ではないが、ESD中にair leakを壁内に来した事による限局性胃壁内気腫と診断した。絶飲食及び胃管による胃内減圧、PPI静脈投与、抗生剤投与で保存的に経過をみたところ、術後2日から発熱もなく自覚症状も軽減した。CRPは術後2日の12.8mg/dlを最高値とし改善した。術後3日に胃管抜去、術後5日に食事開始したが、症状の増悪無く、術後7日の腹部単純CT検査では壁肥厚、壁内気腫は消失していた。術後12日の上部消化管内視鏡検査ではESD後の潰瘍に特記所見無く、術後13日に退院となった。病理学的に、病変は粘膜内にとどまるtub1の癌であり、脈管浸潤もなく、根治度EAであった。いわゆる胃壁内気腫はまれな疾患であり、traumatic type, obstructive type, pulmonary typeに分類される。自験例はESDにより発症したtraumatic typeの胃壁内気腫と考えられた。一方、胃ESDに伴う偶発症としての胃壁内気腫は検索し得た範囲で報告はなく、その対応も確立されていない。今回我々は胃ESDによる胃壁内気腫の一例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 胃ESD, 胃壁内気腫