セッション情報 一般演題

タイトル

バレニクリン酒石酸塩(チャンピックス)が原因と考えられた薬物性肝障害の一例

演者 田口 順(朝倉医師会病院)
共同演者 石井 邦英(朝倉医師会病院), 梶原 雅彦(朝倉医師会病院), 高木 浩史(朝倉医師会病院), 馬場 真二(朝倉医師会病院), 實藤 俊昭(朝倉医師会病院), 安倍 弘彦(朝倉医師会病院), 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座 消化器内科部門)
抄録 症例は70歳男性。飲酒歴は焼酎2合/日30年間。過去に軽度のγGTPの上昇以外の肝機能異常を指摘されたことはない。平成20年12月当院の禁煙外来受診。12月11日からチャンピックスを投与される。服用後に嘔気が出現したため、約3週間で自己判断にて中止した。平成21年2月下旬より全身倦怠感が出現、嘔気も持続し食欲不振もみられたため、3月5日、禁煙外来再診する。血液検査にて肝機能異常を認め、当科紹介入院となる。なお、その間、飲酒量に変化はなかった。身長165cm、体重55kg、血圧103/66mmHg、右悸肋部に弾性軟の肝を1横指触知。圧痛はない。脾は触知せず。血液検査所見では、WBC 5000(Eo 0.4%), Hb 12.0g/dl, PLT 13.4万, TP5.8, Alb 3.0g/dl, T.Bil 1.0mg/dl, AST 167, ALT 63U/l, LDH 234, ALP 486, γGTP 260U/l, Glu 126mg/dl, PT 111.9%, HBs抗原, HBc抗体, HCV抗体,抗核抗体,抗ミトコンドリア抗体、抗平滑筋抗体など全て陰性。腹部超音波所見では肝辺縁は鈍で、軽度の腫大を認めた。入院後SNMC40ml/日、ウルソデオキシコール酸 300mg/日の投与で治療を開始した。治療開始2週間後の血液検査ではT.Bil 0.3mg/dl, AST 21, ALT 14U/l, LDH 208, ALP 264, γGTP 97U/l,と肝機能の改善を認めた。肝機能障害の原因として、バレニクリン酒石酸塩(チャンピックス)が疑われたため、原因検索の目的で肝生検を行った。病理所見では中心静脈周囲の肝細胞変性、門脈域の拡大、リンパ球浸潤、肝細胞の小脂肪的沈着等を認めており、薬物による肝障害が最も考えられた。なお、本症例にDLSTを施行したが、陰性であった。バレニクリン酒石酸塩(チャンピックス)による肝障害の報告は少なく、私どもが検索しえた限りでは症例報告(論文)はみられていない。今回薬物性肝障害が示唆される興味ある一例を経験したので報告する。
索引用語 薬物性肝障害, 禁煙治療