セッション情報 | シンポジウム 「ESDの治療成績向上をめざして」 |
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タイトル | 当院における大腸ESDの現況 |
演者 | 名本 真章(北九州市立医療センター 消化器内科) |
共同演者 | 本田 邦臣(北九州市立医療センター 消化器内科), 杣田 真一(北九州市立医療センター 消化器内科), 向井 康二(北九州市立医療センター 消化器内科), 富田 洋介(北九州市立医療センター 消化器内科), 井原 裕二(北九州市立医療センター 消化器内科), 三澤 正(北九州市立医療センター 消化器内科), 唐原 健(唐原内科クリニック) |
抄録 | 食道、胃ESDは保健収載され、標準的治療となりつつある。一方大腸ESDは解剖学的な構造から手技的に困難で、腸壁の薄さから穿孔の危険性も高い。そのため従来のEMRによる一括切除困難な大きさの腺腫、深達度pMの腺腫内癌にはEPMRも容認されているのが現状である。しかし正確な病理学的診断のためには一括切除が望ましい。われわれは20 mm以上で癌混在の可能性がある病変と直腸カルチノイド腫瘍を大腸ESDの適応としている。当科では2006年11月に二酸化炭素送気法を導入し大腸ESDを開始した。高周波発生装置はVIO300DあるいはICC200を使用、デバイスとして主にフラッシュナイフ1.5mm、また適宜局面によりフックナイフを使用、局注液はムコアップを使用している。スコープはCF-Q240AI、GIF-Q260Jと最近は前方送水機能を有するPCF-Q260JL/Iも使用している。38症例41病変に対しESD施行した。部位は盲腸7、上行結腸8、横行結腸2、下行結腸3、S状結腸12、直腸9。病理学的診断では癌10、腺腫内癌6、腺腫22、カルチノイド3。癌症例の深達度はpM 6、pSM 3、pMP 1。肉眼型はLST-G 20、LST-NG 9、Isp 4、IIa 3、IIc 1、Ip1。 カルチノイドを除く病変切除サイズは平均長径37.8mm(20-70mm)、一括切除率92.7%、完全切除率95.1%。合併症はスネア併用による穿孔1例(2.4%)、いわゆるpin hole穿孔2例(4.9%)、内視鏡的止血術を要した下血1例(2.4%)であり、輸血を必要とした症例はなかった。スネアによる穿孔例は緊急開腹手術となり、pin hole穿孔1例は2日後に腹腔鏡補助下大腸切除手術となった。大腸ESDは高度な手技を必要とする処置であり一般的治療とはなりえていないが処置具の開発、改良や二酸化炭素送気法の併用の普及で将来的には標準的治療となることを期待したい。しかし現段階では大腸ESDの適応病変の選択については十分な診断が必要であり、困難症例の対応は外科との連携が重要であると考えられる。 |
索引用語 | 大腸, ESD |