セッション情報 一般演題

タイトル

難治性膵炎を伴い診断に苦慮した膵癌の一例

演者 新名 雄介(社会保険仲原病院 内科)
共同演者 大神 吉光(社会保険仲原病院 内科), 木村 寿成(社会保険仲原病院 内科), 板場 壮一(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 五十嵐 久人(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 伊藤 鉄英(九州大学病院 肝臓膵臓胆道内科), 林 晃史(九州大学大学院 医学研究院 形態機能病理学), 高畑 俊一(九州大学病 院第一外科), 中村 雅史(九州大学病 院第一外科), 田中 雅夫(九州大学病 院第一外科)
抄録 症例は44歳男性。平成20年6月頃からアルコール摂取後、心窩部痛が起こり、徐々に範囲が背部のほうにも広がっていった。6月30日より38℃台の発熱が出現。7月3日に痛みに絶えられなくなり、当科受診。心窩部から左季肋部にかけての自発痛と圧痛、左背部叩打痛を認めた。血液検査では強い炎症反応と膵酵素の上昇を認めた。腹部造影CT検査では膵体尾部に腫大があり、炎症の波及は後腎傍腔にまで及んでいた。また、仮性嚢胞の形成も認められた。急性膵炎と診断し、絶食、大量輸液、蛋白分解酵素阻害薬投与、抗生剤投与にて保存的に治療を行った。腹痛、炎症反応は徐々に改善してきたもののアミラーゼは高値のままであった。自覚症状が改善し、本人の強い希望もあり7月31日に退院するも飲酒し、8月13日に再び腹痛出現したため当科入院。2回目入院時には心窩部痛、背部痛に加え、左鼠径部痛が出現していた。腹部造影CT検査では体尾部移行部に局所的造影不良域を認めた。また、腸腰筋に接するように新たな仮性嚢胞が認められた。保存的治療にて炎症反応、膵炎症状は改善したが、アミラーゼはやはり高値を維持していた。また、経過中に仮性嚢胞は左腸腰筋内にまで及んだ。炎症反応改善後施行したERPではCTの造影不良域の部位に一致して主膵管の途絶を認め、同部の擦過細胞診はclassIIIaであった。EUSでは強く膵癌を疑う所見は見られなかった。膵体部よりFNAを行い、細胞診の結果はclassIIであった。10月29日に九州大学病院第一外科にて膵体尾部切除術、2群リンパ節郭清、脾臓摘出術が施行された。病理診断はWell to moderately differentiated adenocarcinoma with mucinous cytoplasm, pTS2(2.6cm), pT4, pS(+), pRP(+), pPVsp(+), pAsp(+)であり、11番、18番リンパ節に転移を認め、T4N1M0のStageIVaであった。急性膵炎及びそれに伴う仮性嚢胞が主な臨床像を示し、診断に苦慮した膵癌の症例として報告する。
索引用語 急性膵炎, 膵癌