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タイトル

低侵襲化を目指した高リスク食道癌手術 ―二期的再建およびmicrosurgeryによる血管吻合付加の意義―

演者 佐伯 浩司(九州大学大学院 消化器・総合外科)
共同演者 森田 勝(九州大学大学院 消化器・総合外科), 久保 信英(九州大学大学院 消化器・総合外科), 中ノ子 智徳(九州大学大学院 消化器・総合外科), 藤中 良彦(九州大学大学院 消化器・総合外科), 杉山 雅彦(九州大学大学院 消化器・総合外科), 吉田 倫太郎(九州大学大学院 消化器・総合外科), 吉永 敬士(九州大学大学院 消化器・総合外科), 江見 泰徳(九州大学大学院 消化器・総合外科), 掛地 吉弘(九州大学大学院 消化器・総合外科), 前原 喜彦(九州大学大学院 消化器・総合外科)
抄録 【はじめに】食道癌に対する食道切除・再建術において、肝硬変や糖尿病などの合併例、胃切除後の結腸再建などのハイリスク症例では、肺合併症や縫合不全等の合併症が発生しやすく重篤化しやすい。当科では、高リスク食道癌症例に対して二期的再建を行うとともに、結腸再建では先端の血流を保つ目的でmicrosurgeryによる血管吻合を付加している。【適応症例】肝硬変、糖尿病、腎不全、結腸再建、リスクを伴うサルベージ症例などを適応とする。【手術手技】1.一期目手術(食道切除、食道瘻、空腸瘻造設):開胸にて食道切除、および縦隔リンパ節郭清を行う。肛門側食道断端は横隔膜直上で切断する。右気管支動脈、胸管は原則として温存する。次に仰臥位に体位変換し、頸部リンパ節郭清、食道瘻造設を行うとともに、小切開にて、上部空腸より口側、肛門側方向へ減圧チューブ、栄養チューブをそれぞれ挿入する。2.二期目手術(再建):第一期手術後、約2-3週間後に行う。第一助手が胃を伸展させながら幅3-3.5cmの大彎側細径胃管を作製する。胸壁前または胸骨後経路にて挙上し、circular staplerを用いて食道と胃管大彎側とを端側にて吻合する。胃切除症例では中結腸動脈を温存しつつ胸壁前経路で右半結腸を挙上し、回結腸静脈と頸部の静脈をmicrosurgeryで吻合(superdrainage)する。胃管断端からの出血および大網内の動脈のback flowの認められない場合は動脈吻合(supercharge)も付加する。胃側の血管として、左胃大網動静脈、短胃動静脈、後胃動静脈などが吻合動静脈となる。頸部の動脈としては上甲状腺動脈、頸横動脈等を、静脈としては前頸静脈、外頸静脈、内頸静脈等を吻合に用いる。【結果】2003年以降、高リスク症例14例に対して二期的再建を行ったが、術死や再建臓器壊死などを含む重篤な合併症は経験しなかった。【結語】高リスク食道癌症例に対する二期的再建では侵襲を低減化でき、有用な術式と考えられる。特に結腸再建におけるmicrosurgeryによる血管吻合付加は、合併症が少なく安全な術式である。
索引用語 食道癌, 低侵襲