セッション情報 研修医発表

タイトル

多臓器転移を来し、急速な転帰を辿った原発不明癌の1例

演者 阪上 尊彦(久留米大学病院臨床研修管理センター)
共同演者 河野 弘志(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 小林 哲平(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 平田 和之(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 池原 龍一郎(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 深堀 理(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 山崎 博(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 安元 真希子(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門DELIMITER久留米大学医学部病理学講座), 有田 桂子(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 長山 幸路(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 長谷川 申(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 秋葉 純(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門DELIMITER久留米大学医学部病理学講座), 光山 慶一(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 鶴田 修(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
抄録 症例は67歳の男性.平成21年1月,左側腹部痛を認めたため,近医を受診.血液検査でHb:9.5g/dlと貧血を認め,当院消化器病センターを紹介受診となった.下腹部痛および食欲不振が増悪したため緊急入院となった. 上部消化管内視鏡検査ではVater乳頭より肛門側の十二指腸下行脚に境界明瞭,立ち上がりの急峻な発赤調の隆起性病変を認め、十二指腸原発の癌と診断した.また十二指腸,胃穹隆部や胃体上部に小潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の隆起性病変が多発していた.下部消化管内視鏡検査では盲腸から直腸まで潰瘍を伴う粘膜下腫瘍様の隆起性病変を多数認め,生検では上部,下部消化管病変ともに低分化腺癌の診断であったが,十二指腸下行脚以外の病変は消化管転移と考えた.CTでは,右肺S2に18×12mm大の辺縁不整なmass lesion,縦隔から大動脈周囲のリンパ節腫脹,右副腎に25mm大のmass lesion,脾臓内に5mm程度の淡い低吸収域を数個認め,肺以外の病変は多臓器の転移巣と考えられた.PET-CTを施行し,全身に異常集積を認めたが原発巣は不明であった. 以上より原発巣として十二指腸癌および肺癌が考えられたが,確定診断は困難であった.入院後,絶食輸液管理にて疼痛は一旦軽快したが,その後,右下腹部激痛を認め,汎発性腹膜炎と診断された.しかし全身状態不良で,外科的処置の適応外と考えられ,保存的に経過観察された.その後徐々に全身状態は悪化し,症状出現時より約1ヶ月後に死亡退院となった.病理解剖では食道を除く全消化管・腸間膜・右肺上葉・肝臓・膵臓・脾臓・両副腎,気管分岐部・肺門部・傍大動脈・腸間膜のリンパ節など全身に低分化腺癌の浸潤を認めた.原発巣として十二指腸や肺が最も疑われたが,原発巣としては小サイズであり,またHE標本上確定診断は困難であった.また,急性腹症の原因としては,虫垂穿孔による汎発性腹膜炎が考えられた.本症例は多臓器に転移を来し,症状出現後約1か月という急速な転帰を辿った原発不明腺癌であり,急速な病状の進行や転移巣の拡がりを鑑みると貴重な症例と考え,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 十二指腸癌, 多臓器転移