セッション情報 一般演題

タイトル

術前診断に苦慮した膵粘液癌の1例

演者 尾崎 宣之(熊本大学大学院消化器外科学)
共同演者 坂本 快郎(熊本大学大学院消化器外科学), 橋本 大輔(熊本大学大学院消化器外科学), 志垣 博信(熊本大学大学院消化器外科学), 中原 修(熊本大学大学院消化器外科学), 古橋 聡(熊本大学大学院消化器外科学), 田中 洋(熊本大学大学院消化器外科学), 高森 啓史(熊本大学大学院消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大学大学院消化器外科学)
抄録 症例は74歳女性、生来健康で、毎年町の検診を受けていた。2008年の検診にて主膵管の拡張と膵頭部腫瘍を指摘され、当科紹介となった。臨床症状および身体所見に特記事項はなく、血液検査所見ではCEA が2.6 ng/ml と軽度の上昇を認めるも、その他の腫瘍マーカーや膵内分泌ホルモンは正常範囲内であった。腹部超音波検査にて膵頭部に18.9×17.0 mmの境界明瞭、辺縁不整、内部エコーが不均一な腫瘤を認め、一部に小嚢胞様の所見を認めた。造影CT検査では、膵頭部に径15mm大の造影効果の乏しい腫瘍を認め、造影パターンはcystic lesion内に徐々に造影効果が広がっていく所見であった。超音波内視鏡検査では膵頭部に径23 mm、境界やや不明瞭で辺縁不整、内部不均一な低エコーの腫瘤を認め、内部は大小の嚢胞性病変が混在し、多房性と考えられた。病変より尾側の主膵管は3.6 mmと軽度拡張し、主膵管との連続性は同定できなかった。MRCPでは膵頭部に分葉状の形態を呈する23×17 mmの腫瘤性病変を認め、T2強調画像において腫瘍は高信号を呈し、内部に低信号が散在する多房性腫瘍と考えられた。腫瘍は主膵管と近接しているものの、明らかな連続性は指摘できず、主膵管は腫瘍により圧排され、一部走行が不明瞭であった。FDG-PETでは腫瘍部に異常集積は認めなかった。術前細胞診は同意が得られず、施行しなかった。以上の所見より、漿液性嚢胞腺腫やSolid-pseudopapillary tumor、混合型IPMN等を鑑別診断として考え、また典型的ではないが膵頭部癌等も否定できないため、十分なインフォームドコンセントのもと亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した。術後病理組織学的検査では、膵実質内に粘液産生が目立ち、粘液性結節を示すadenocarcinomaの浸潤増殖を認め、膵粘液癌の診断であった。神経浸潤、リンパ節転移を認め、T1N2M(-) fStageIIIであった。膵粘液癌は、膵癌取り扱い規約では膵癌の一亜型として分類されているが、比較的稀な組織型でありその画像所見に関する報告は少なく、術前診断に苦慮することも稀ではない。
索引用語 膵粘液癌, 膵癌