セッション情報 |
一般演題
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タイトル |
腸管スピロヘータ症(intestinal spirochetosis)の2例
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演者 |
辛島 嘉彦(福岡大学 筑紫病院 消化器科) |
共同演者 |
大津 健聖(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 平井 郁仁(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 松井 敏幸(福岡大学 筑紫病院 消化器科), 田辺 寛(福岡大学 筑紫病院 病理部), 岩下 明徳(福岡大学 筑紫病院 病理部) |
抄録 |
腸管スピロヘータ症(intestinal spirochetosis)は本邦では比較的稀な疾患である。当院で経験した2例の腸管スピロヘータ症例について多少の文献的考察を踏まえて報告する。症例1は34歳男性で慢性下痢、下腹部痛を主訴に来院。海外渡航歴なし。下部内視鏡検査を施行したところ、S状結腸に粘膜の発赤、直腸に粗ぞう粘膜を認めた。直腸の粗ぞう粘膜からの生検標本では病理組織学的に上皮表面に好塩基性で毛羽立ち状に付着した特徴あるスピロヘータの菌塊が観察されたが、炎症は比較的軽度であった。ニューキノロン系抗菌薬、整腸剤投与にて症状軽快した。症例2は25歳男性で半年前より続く下痢、下血及び腹痛を主訴に近医受診。海外渡航歴、同性愛歴ともになし。内視鏡所見より潰瘍性大腸炎を疑われ当院紹介受診。当院施行の下部内視鏡検査では直腸にびらん、小潰瘍が多発しており、直腸生検標本の病理組織学的検査にてアメーバ性腸炎と診断された。また炎症が比較的軽い上皮の表面にスピロヘータの菌塊を認めた。アメーバ性腸炎に対しメトロニダゾール投与を行い、腹部症状は軽快。4ヵ月後の経過観察の内視鏡ではびらん、潰瘍所見は軽快し、また直腸生検標本からはアメーバ虫体、腸管スピロヘータは検出されなかった。 ISはグラム陰性桿菌であるBrachyspira属によって起こる人畜共通感染症である。症例1のように慢性下痢の原因と考えられるものから、症例2のようにアメーバ性腸炎に合併する場合、また自覚症状を欠き腺腫に偶然合併して見られる症例など発見機会はさまざまである。特徴的な症状や好発部位、また特異的内視鏡所見は特定されておらず、臨床所見のみから診断するのは難しい。また通常の病理組織診断においても看過されやすいため、診断を行うためには病理組織標本の丹念な観察を行うことが必要である。 |
索引用語 |
腸管スピロヘータ, 大腸 |