セッション情報 研修医発表

タイトル

17か月の経過で残存直腸に粘膜下層浸潤癌の発生を認めた家族性大腸腺腫症の一例

演者 山村 いずみ(九州大学大学院病態機能内科学)
共同演者 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 森山 智彦(九州大学大学院病態機能内科学), 江頭 一成(九州大学大学院病態機能内科学), 矢田 親一朗(九州大学大学院病態機能内科学), 具嶋 正樹(九州大学大学院形態機能病理学), 飯田 三雄(九州大学大学院病態機能内科学)
抄録 症例は48歳の女性。3歳時より四肢・体幹・頭部に皮膚嚢腫が多発しており、23歳時に2人の兄とともに家族性大腸腺腫症と診断された。以後腺腫に対して、内視鏡切除意を施行していた。28歳時に大腸癌発生の予防目的に大腸亜全摘術および回腸直腸吻合術を施行し、スリンダック内服下に毎年消化管を含めた全身の検査を行っていた。2009年2月に施行したサーベイランスの大腸内視鏡検査では、残存直腸に12mm大の粘膜集中を伴うlla+llc病変を認め、生検で高分化型腺癌と診断された。拡大観察ではllc面にVi高度不整を認め、超音波内視鏡では腫瘍は第1-2層を主体とした低エコー性腫瘤として描出され、第3層は狭細化していた。注腸X線検査では同病変は残存直腸Rb右側壁の陥凹を伴う扁平隆起として描出され、側面にわずかな変形を認めた。以上の所見より粘膜下層に浸潤した癌と判断したが、内視鏡治療に伴う潰瘍瘢痕により深達度を過大評価した可能性があること、また外科的切除により人工肛門となることを患者が拒否したため、まずは内視鏡的切除を試みることとなった。内視鏡的粘膜下層剥離術を施行したところ、同病変は粘膜下層に2000μm浸潤した腫瘍でリンパ管浸襲陽性、垂直断端陽性であったため、現在、追加治療として外科的切除を検討中である。本症例は17か月前の2007年9月に施行した大腸内視鏡検査で同病変を認めておらず、retrospectiveな検討においてもその存在を指摘することは困難であった。家族性大腸腺腫症のサーベイランス間隔を考慮する上で教訓的な症例と考え、報告する。
索引用語 家族性大腸腺腫症, サーベイランス