セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 炎症性腸疾患に合併したと考えられる低分化型進行大腸癌の一例 |
演者 | 江頭 一成(九州大学大学院病態機能内科学) |
共同演者 | 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学), 梁井 俊一(九州大学大学院病態機能内科学), 具嶋 正樹(九州大学大学院形態機能病理学), 矢田 親一朗(九州大学大学院病態機能内科学), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 飯田 三雄(九州大学大学院病態機能内科学) |
抄録 | 症例は48歳男性。20歳頃より1日3~5行の下痢が出現、過敏性腸症候群と診断されるも、いずれの消化管検査も実施歴なく、加療もされていなかった。2008年12月より労作時息切れが出現、近医を受診し高度貧血を指摘されたため、当科紹介受診となり、緊急入院となった。理学所見上、眼瞼結膜は貧血様で頻脈を認めた。採血検査所見では、Hb 3.5g/dlと著明な小球性貧血、炎症反応陽性の他、CEA、CA19-9の高値を認めた。大腸内視鏡では、下行結腸に全周性潰瘍性病変を認め、生検で低分化腺癌が検出された。また主病変部以外では、回盲弁の求心性狭窄、終末回腸のアフタ様病変、全大腸に及ぶアフタ様病変および血管透見の乱れを認めた。注腸X線検査では、下行結腸の腫瘍性病変は長径7-8cmにわたる管状狭窄として描出され、終末回腸の拡張を伴う回盲弁部の高度狭窄、ならびにハウストラの減少ないし消失を認めた。CT検査で腹膜播種が疑われたが、早晩閉塞症状をきたすと考えられたため手術を行う方針となった。術中多数の腹膜播種の所見を認め、主病変部のみの切除となり人工肛門増設術を施行された。病理組織学的に腫瘍は粘液癌を伴う低分化型腺癌(深達度SE)であった。なお切除腸管内には非乾酪性類上皮細胞肉芽腫は検出されなかった。現在、FOLFOX-6による化学療法を施行中である。本例は、潰瘍性大腸炎やクローン病を始めとする炎症性腸疾患の典型像を有しておらず、背景疾患の診断を確定することはできなかったが、回盲弁部の求心性狭窄、ハウストラの消失所見から、慢性の経過で大腸炎が存在したものと推定された。さらに、主病変部周囲にdysplasiaを伴っていなかったものの、組織型からも炎症性腸疾患関連大腸癌と考えられた。このような炎症性腸疾患関連大腸癌は稀と考えられ、今回若干の文献的考察を加え報告する。 |
索引用語 | 炎症性腸疾患関連大腸癌, 炎症性腸疾患 |