抄録 |
【症例】46歳 男性。主訴腹満。以前よりビール1日3~5Lの飲酒歴あり。アルコール性肝硬変と診断されたが、アルブミン 4.6 g/dlと肝機能は比較的保たれていた。平成20年6月より通院しなくなったが、平成20年11月より腹水が出現,増悪し、11月14日当院肝臓内科に入院、血液データ上アルブミン 2.2 g/dl, 総ビリルビン 4.48 mg/dl を認め、 当初肝機能低下が原因と考えられ、利尿剤、アルブミン製剤投与で経過をみられていたが、改善せず、蛋白尿を伴う腎障害も認め、12月15日BUN 42 mg/dl 、Cre 6.05 mg/dlまで上昇。腎機能低下に関して、膠原病,血管炎,血液疾患,原発性糸球体疾患などを鑑別精査したが、合致する所見は認められなかった。また、大量腹水のため腎生検は施行できなかった。12月26日食道静脈瘤破裂を来たし以後ICU管理となり、その後腎機能低下が進行し、1月1日CHDFを導入したが、状態改善せず1月14日に死亡した。【考察】本症例の腎障害に関して腎生検は施行できなかったが、除外診断により肝腎症候群と診断した。肝腎症候群は、急速に進行する1型と難治性腹水と伴い、比較的慢性に経過する2型に分類されるが、高度な蛋白尿は診断基準に含まれない。本症例は急速に進行した肝硬変に伴う肝腎症候群が疑われたが,高度な蛋白尿を伴い、診断に苦慮した。【結語】急速に進行し、高度な蛋白尿を伴う腎障害を合併した肝硬変症の一例を経験したので、肝腎症候群を伴う肝硬変症について文献的考察を加えて報告する。 |