セッション情報 一般演題

タイトル

大量下血を契機に診断され止血に難渋したクローン病の一例

演者 山田 隆史(原三信病院 消化器科)
共同演者 瀧澤 延喜(原三信病院 消化器科), 長田 美佳子(原三信病院 消化器科), 高橋 誠(原三信病院 消化器科), 中村 典資(原三信病院 消化器科), 松坂 浩史(原三信病院 消化器科), 兼城 三由紀(原三信病院 消化器科), 千々岩 芳春(原三信病院 消化器科)
抄録 症例は65歳、男性。57歳時に上行結腸憩室穿孔に対して回盲部切除術、62歳時に腸閉塞に対して癒着剥離術の既往がある。2008年6月頃より、しばしば血便を認めており、7月28日、頻回な血便を認め、29日より脱力、ふらつきを自覚し、同日当院を受診し、消化管出血による出血性ショックの診断で緊急入院となった。血液検査では炎症反応高値、貧血、アルブミン低値を認め、腹部CT検査では、上行結腸の全周性壁肥厚を指摘された。下部消化管内視鏡検査では、回盲部切除後吻合部の口側小腸側に、深い地図状潰瘍と敷石状外観、また、深い縦走潰瘍を認めた。潰瘍底に拍動性の露出血管を認め、出血源と判断し、止血処置を行った。病変部を生検したが、慢性活動性炎症像を認めるのみであった。逆行性注腸造影検査では、回腸終末部に約8cmにわたって狭窄を認め、狭窄部は敷石状で、一部腸管外に突出するバリウムを認め、瘻孔の存在が示唆された。縦走潰瘍、敷石状変化認め、内視鏡所見と併せ、クローン病と診断した。第1病日より絶食、抗生剤投与、第2病日より5-ASA製剤、整腸剤を投与し、TPN管理とした。第4、第7病日にそれぞれ下血を認め、内視鏡的に止血した。病勢の改善なしと判断し、第8病日よりPSL40mgを開始。病状は改善傾向であったが、第26病日にPSLを30mgに減量したところ、CRPの上昇を認め、第30、第31病日に再び下血した。PSLを40mgに再度増量して以降は、下血、貧血の進行は認めておらず、第87病日よりPSLを漸減。2009年3月現在7.5mgまで減量でき、再燃を認めていない。
クローン病の初発症状として、13.4~43.6%の症例に顕出血を認めるとの報告があるが,出血性ショックを来たすような大量下血を認める頻度は約0.6~6.0%と少なく、大量下血を契機に診断されたクローン病の一例を経験したため、若干の文献的考察を含め報告する。
索引用語 クローン病, 下血