抄録 |
【症例】64歳女性。8ヶ月前に受けた採血では肝、腎機能とも正常であった。1年ほど前から腹部の膨隆を自覚していたが特に症状なく放置。2ヶ月前より膨隆が増悪、尿量減少を自覚、2月20日下肢浮腫を主訴に当院受診、腎障害とCT上肝に11cm超の嚢胞を認め当科紹介【現症】身長148cm、体重 46kg、頭部;貧血黄疸なし、胸部;異常所見なし、腹部;著明膨隆、波動なし、緊満あり、下肢浮腫あり【検査所見】WBC;6700,RBC;393万,Hb11.9,Plt;21.7万,AST;68,ALT;56,γ-GTP;321,LDH;128,T.bil;0.46,BUN;50,Cr; 3.91,CRP;0.37,CEA;1.9,CA19-9;6.3.嚢胞液中 CEA;1.1,CA19-9; 288.3, 細胞診;ClassIIIb、結節生検;悪性所見なし【画像】肝右葉に18cm,左葉に11cmの嚢胞性腫瘤があり、左葉の病変では壁在結節多発。腎は圧排され、変形が著明。【臨床経過】入院当日にまず右側の嚢胞をドレナージ。6リットルの淡血性~淡黄色の嚢胞液を排液した。さらに悪性との鑑別も兼ねて壁在結節を生検した上で左葉の嚢胞を穿刺排液、ゼリー状の透明な排液を1リットル排液。Crは2.0まで低下したがそれ以上は改善せず。嚢胞が巨大であったこと、悪性との鑑別が困難であったことのため、左嚢胞切除、右嚢胞開窓術目的で外科転科となった。【考察】肝嚢胞は通常良性の疾患であり経過観察のみでフォローされることが多いが、まれに他臓器への圧迫症状や、肝内胆管などへの圧排によりドレナージを必要とすることがある。その際ドレナージ後に癒着術や開窓術を行い再発防止を行うが、巨大肝嚢胞の場合開窓術が選択されることが多い。嚢胞腺癌はまれな腫瘍ではあるが急速増大を来す嚢胞の場合は鑑別を要し、術前には診断困難である場合もある。今回急速に増大し嚢胞腺癌との術前鑑別が困難であった嚢胞性腫瘤の1例を経験したので報告する。 |