セッション情報 パネルディスカッション11(肝臓学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

門脈圧亢進症-新たな画像診断法と治療

タイトル 外PD11-8:

門脈圧亢進症に対する脾摘の有用性

演者 高村 博之(金沢大・消化器・乳腺・移植再生外科)
共同演者 林 泰寛(金沢大・消化器・乳腺・移植再生外科), 太田 哲生(金沢大・消化器・乳腺・移植再生外科)
抄録 【はじめに】門脈圧亢進症は,肝硬変の存在,食道胃静脈瘤などの門脈系の遠肝性側副血行路の発達,脾機能亢進を伴う脾腫の存在によって診断される.当科では門亢症に対して脾摘を積極的に行ってきたので,その有用性と問題点について報告する.脾摘は門脈圧の低下や脾機能亢進に伴う汎血球減少の改善のみならず,肝機能も改善し,合併する肝癌に対する侵襲的治療の継続や肝炎に対する治療継続を可能にする.【対象】過去5年間に門亢症に対して脾摘やHassab手術を行った47例である.46例が肝硬変例で,ウイルス性肝炎36例,アルコール性5例,Banti症候群2例,NASH1例,PBC1例で,膵頭部切除後の左側門亢症が1例であった.肝癌に対する肝切除と同時に血小板の高度の低下を理由に脾摘を行った症例は5例であった.【結果】術後に門脈本管・肝内門脈に血栓を認めた症例は12例32%にのぼり,全例で術後の一定期間に抗凝固療法を行う必要があった.脾摘により血小板値のみならず白血球値も有意に上昇した.また,PT活性,T.Bil値,アルブミン値,アンモニア値も改善を認め,Child-Pugh値やMELD scoreも改善した.一方,赤血球値の改善は認められなかった.また,GSA-SPECTの肝クリアランス値やICG負荷試験値も改善し,脾摘によって外科的肝切除が可能となり肝切除を行った症例も認められた.左側門亢症は脾摘で膵空腸吻合部からの持続的な消化管出血が速やかに治癒し,肝硬変に伴う小腸静脈瘤出血例も脾摘と静脈瘤の摘除によって腸管切除を行わずとも速やかに止血された.19例に脾摘後に肝癌の出現を認めたが,全例で輸血を必要とせずに安全にRFAや肝切除,肝動注化学療法が施行可能であった.肝移植後のウイルス性肝炎再燃による高度の肝線維化症例3例に対しても脾摘を行い,血小板値の改善により肝機能の改善と抗ウイルス療法の継続が可能であった.【結語】門亢症に対する脾摘は,門脈血栓症のリスクを伴うものの,汎血球減少の改善と肝機能の改善を認め,生命予後を明らかに改善する.
索引用語 門脈圧亢進症, 脾摘