セッション情報 パネルディスカッション12(肝臓学会・消化器病学会合同)

ウイルス性肝炎と肝外病変

タイトル 肝PD12-1:

HCVの非肝臓系細胞株に対する感染培養システムの確立と肝外病変成立に関わる宿主因子の同定

演者 福原 崇介(大阪大微生物病研究所)
共同演者 本村 貴志(大阪大微生物病研究所DELIMITER九州大・消化器総合外科), 松浦 善治(大阪大微生物病研究所)
抄録 【目的】HCV感染に伴う悪性リンパ腫などの肝外病変の発症メカニズムは動物感染系や非肝臓系細胞への感染培養系がないために、不明である。本研究では、HCVの非肝臓系細胞への感染系を樹立し、肝外病変の発症メカニズムを明らかにすることを目的とする。【方法】非肝臓系細胞におけるレセプターの発現をcDNA arrayデータベースで検討し、そのうち12種類の細胞でHCVの細胞侵入が可能かを評価した。HCV-RNAの複製を亢進させる肝臓特異的なmiRNAであるmiR-122をHCVのentryが可能であった10種類の非肝臓系細胞に発現させ、HCVccが複製可能な細胞株を探索した。それらの感染系を用いて、HCV感染に伴い変化する宿主遺伝子発現をcDNA microarrayで網羅的に解析した。【結果】データベースの解析では多くの非肝臓系細胞で内在性にHCVのレセプターが発現していることが確認された。また、シュードタイプHCVも12種類の細胞のうち10種類で感染可能であった。miR-122を発現させたそれらの10種類の細胞株のうち、子宮由来のHec1Bや腎臓由来の293T-CLDN等の6種類の細胞でHCVcc感染後の有意なウイルスRNA量の上昇が認められた。中でもHec1B細胞では、miR-122を発現しないコントロール細胞でもHCV-RNAが経時的に上昇し、miR-122の特異的阻害剤でも感染が抑制されないことから、miR-122非依存的にHCV-RNAが複製していることが考えられ、肝外細胞でもHCVが感染し、複製しうることが示唆された。 肝臓系であるHuh7およびHep3B細胞と非肝臓系であるHec1Bおよび293T-CLDN細胞にHCVccを感染させ、24時間後の細胞内の遺伝子変化をcDNA microarrayで網羅的に解析したところ、がん関連遺伝子であるTP63が有意に上昇していることが明らかとなった。さらに、TP63の発現誘導は非肝臓細胞でより強いことが示された。現在、その遺伝子発現の機能を詳細に解析中である。【考察】HCVは非肝臓系細胞でも感染、複製が可能であり、HCV感染そのものが、肝外病変発症に関わっている可能性がある。
索引用語 miR-122, TP63