セッション情報 パネルディスカッション12(肝臓学会・消化器病学会合同)

ウイルス性肝炎と肝外病変

タイトル 肝PD12-4:

ウイルス性慢性肝炎患者における本態性M蛋白血症の頻度と意義についての検討

演者 春名 能通(大阪府立急性期・総合医療センター・消化器内科)
共同演者 葛下 典由(大阪府立急性期・総合医療センター・消化器内科), 井上 敦雄(大阪府立急性期・総合医療センター・消化器内科)
抄録 【目的】肝炎ウイルスは、リンパ系細胞に感染し、transformationを惹起したり、免疫応答を介し宿主免疫に影響を与えることにより血液系悪性疾患の発症に関与することが示唆されている。一方、本態性M蛋白血症(MGUS)は、50歳以上の一般人口の約2%に認められるが、このうち年率1%の割合で多発性骨髄腫やマクログロブリン血症を発症すると報告されている。しかしながら、肝疾患におけるMGUS合併の実態は未だ明らかではない。われわれは、ウイルス性慢性肝炎をはじめとする肝疾患患者においてMGUSの罹患状況を調査し、その特徴を明らかにしようと試みた。【方法】慢性肝疾患患者374例(中央値67歳(17歳-87歳))を対象とした。B型慢性肝炎55例、C型慢性肝炎226例、非アルコ-ル性脂肪性肝炎54例、アルコ-ル性肝疾患9例、自己免疫性肝炎+PBC30例であった。全例において血中蛋白分画を測定し、M蛋白の存在が疑われた症例については、免疫電気泳動M蛋白同定を施行した。【成績】全症例374例中13例(3.5%)でM蛋白血症が、認められた。MGUSの罹患率は、B型慢性肝炎5.5%、C型慢性肝炎3.1%、非アルコ-ル性脂肪性肝炎3.7%、アルコ-ル性肝疾患0%、自己免疫性肝炎+PBC3.3%であり、統計学的に有意ではなかったが、B型慢性肝炎において罹患率が高い傾向にあった。また、B型慢性肝炎でMGUSを有する者は中央値56歳(53歳-56歳)であったが、他肝疾患のMGUS患者は中央値69歳(17歳-87歳)であり、有意に(p=0.042)B型慢性肝炎で若年であった。一方、男女別にMGUSの罹患率を検討すると、C型慢性肝炎にのみ顕著な偏りが見られた(p=0.0036)。すなわち、女性136例中MGUSは、見られなかったが、男性90例中7例(7.8%)がMGUSを併発していた。【結論】C型慢性肝炎においては男性患者に高率にMGUSの合併が認められた。一方、B型慢性肝炎患者は、比較的若年者にMGUSが見られ、これらの疾患群においては、血液系悪性疾患の発症をも念頭に置いた経過観察が必要かと考えられる。
索引用語 ウイルス性肝炎, M蛋白血症