セッション情報 シンポジウム2(消化器病学会・肝臓学会合同)

C型肝炎治療の最前線

タイトル 肝S2-1:

発癌リスクと治療反応性予測に基づくC型肝炎の個別化治療戦略

演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 玉城 信治(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】Telaprevir(TVR)によりC型慢性肝炎の著効(SVR)率は向上した。しかしPeg-IFN・RBV(PR)でウイルス非陰性化 (NVR)を呈した症例では、TVR併用療法のSVR率は約30%に留まるため、次世代治療薬までの待機も選択肢となる。本研究では、発癌リスクによる治療必要性の評価、PR治療反応性に基づくTVR治療効果の予測、およびそれらに基づく個別化治療戦略を検討した。【方法】C型慢性肝炎1003例を対象として発癌リスクを判別するデータマイニング・モデルを作成した。外部コホート(1072例)を用い、発癌リスク例に対するPR療法の効果を検討した。PR療法を行った527例を対象とし、治療開始前と治療4週までのHCV 減衰を組みいれたNVR予測を検討した。PRによる4週間のlead in(LI)後にTVR併用を開始した15例を対象とし、LIに対する反応性とTVR治療によるHCV動態の関連を検討した。【成績】年齢、血小板、アルブミン、ASTを組み合わせた発癌予測モデルで、全症例の36%が中等度リスク(5年発癌6.3~7.3%)、15%が高度リスク(5年発癌20.9%)を有した。中・高リスク症例に対するPR療法のSVRは39%であり、SVRにより発癌率が低下した(5年発癌9.5% vs 4.5%, p=0.04)。PR療法のNVR率は、IL28B Minorかつ血小板14万未満で68%、14万以上で51%、IL28B Majorかつ血小板14万未満で15%、14万以上で6%だった。治療4週のHCV減衰が1.8 log以上 vs未満のNVRは4% vs 73%であり、IL28B Majorでも治療4週でHCVが1.8 log減少しなければNVRが67%、逆にIL28B Minorでも1.8 log減少すればNVRは9%であった。LI治療4週でHCV減衰が1.8 log以上 vs未満におけるTVR併用翌日のHCV 陰性化は23% vs 0%、1週後の陰性化は83% vs 0%だった。【結論】発癌リスクのある症例ではSVRによる発癌抑止を目指して早期の治療を考慮すべきである。IL28Bと血小板数に治療4週時点のHCV減衰を加味することで、精密なNVR予測が可能である。PRによるLI治療の反応性は、TVR併用療法の超早期反応性と密接に関連し、TVR治療適応となる症例の選択に重要な情報となる。
索引用語 C型肝炎, 発癌