セッション情報 パネルディスカッション12(肝臓学会・消化器病学会合同)

ウイルス性肝炎と肝外病変

タイトル 消PD12-6:

C型慢性肝疾患におけるH.pylori除菌の血小板数への効果

演者 松本 直樹(日本大・消化器肝臓内科)
共同演者 小川 眞広(日本大・消化器肝臓内科), 森山 光彦(日本大・消化器肝臓内科)
抄録 【目的】H.pylori除菌は現在、胃十二指腸潰瘍再発予防、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)などで保険適応となっている。また肝硬変においてはH.pylori除菌により肝性脳症が改善することが報告されている。C型慢性肝疾患では血小板減少が合併し、しばしばインターフェロン、肝癌治療の阻害要因となるが、H.pylori感染の関与、除菌の影響についての報告は少ない。本研究の目的は、C型慢性肝疾患におけるH.pylori除菌の血小板増加効果を明らかにすることである。【方法】対象は2001年~2011年に当施設でH.pylori除菌を行った、HCV抗体陽性の28例(除菌群)。除菌前と1、3、6、9、12ヶ月後の血小板数の変化について、H.pylori陽性ながら除菌が行われなかった16例と除菌失敗の2例を併せた対照群18例(非除菌群)と後ろ向きに比較した。他のITP治療を併用した2例は除外した。【成績】観察期間中央値は9.9ヶ月。除菌成功率は93.3%。除菌群の血小板は除菌前、1、3、6、9、12ヶ月後で各々12.3±5.8万、11.8±6.6万、11.6±6.8万、12.0±6.5万、12.5±6.7万、13.3±7.1万で、非除菌群は各々17.5±7.9万、16.6±6.6万、13.9±6.3万、16.7±5.2万、15.4±6.3万、18.3±7.1万で両群とも有意な上昇は見られなかった。両群の比較では治療前で除菌群が低値だった(P=0.0266)以外には有意差は認めなかった。除菌群のうち前値の2倍以上または10万以上の増加を示したのは3例で、血小板増加の奏功率は10.7%であった。そのうち1例では判定時に高度の細菌性腸炎の関与も考えられた。副作用は2例で皮疹が認められた。【考察】ITPに対する除菌では半数以上が奏功すると言われている。今回の検討ではその成績には及ばなかったものの、一部の症例では血小板増加が認められた。今後、症例を蓄積して奏功例の予測因子を考察する必要性が考えられた。
索引用語 H.pylori, C型肝炎