セッション情報 パネルディスカッション12(肝臓学会・消化器病学会合同)

ウイルス性肝炎と肝外病変

タイトル 肝PD12-7:

肝炎ウイルス陽性患者における腎障害の組織学的診断とその治療についての検討

演者 山本 憲彦(三重大大学院・消化器内科学)
共同演者 白木 克哉(三重大大学院・消化器内科学), 竹井 謙之(三重大大学院・消化器内科学)
抄録 (目的) B型肝炎では膜性腎症が、C型肝炎では膜性増殖性腎炎が発症することが知られているが、その他の病態も存在し得る。今回我々は、HCV抗体陽性あるいはHBs抗原陽性患者に対し、当院で腎生検を施行した症例に関して解析したので報告する。(方法)2006年3月から2012年1月までに当院で腎生検を施行した734例中、HCV抗体陽性、あるいは、HBs抗原陽性患者34例について検討を行った。(成績)患者内訳は HCV抗体陽性25例、HBs抗原陽性10例(重複感染1例)であった。合併症としては高血圧を10例、糖尿病を17例に認めた。また生体肝移植後の患者を5例認めた。腎生検の契機は、蛋白尿30例、Cre上昇4例、他疾患における腎病変の評価目的が1例であった。HCV陽性患者25例中5例はクリオグロブリン陽性であった。腎生検の結果、膜性増殖性腎炎8例、IgA腎症6例、糖尿病性腎症4例、生体肝移植後の患者でタクロリムスによる腎障害が3例、ANCA関連腎炎2例、糖尿病性腎症+膜性増殖性腎炎2例、その他9例であった。その他9例中、B型慢性肝炎に対するアデフォビル投与が原因と考えられた症例も存在した。経過観察期間は中央値546日間。治療に関してはHCV関連の膜性増殖性腎炎と診断した症例のうち4例にIFN投与を行い1例にSVRをえた。経過観察期間中5例は透析導入となった。症例1: 44歳女性。C型慢性肝炎で経過中、尿蛋白7.17/g.creと著明に増加したために腎生検施行。膜性増殖性腎炎と診断。IFN投与にてSVRを得られ尿蛋白も陰性化。症例2: 57歳男性。B型慢性肝炎に対してラミブジン+アデフォビル投与中腎障害を認めた。腎生検の結果、アデフォビルによる薬剤性腎障害と診断。アデフォビル確日投与とし経過観察とした。321日間の経過観察期間中、Creは1.81mg/dl→1.47mg/dlと低下傾向である。(結論)HCV抗体陽性、HBs抗原陽性患者における腎疾患では様々な病態が存在し、治療介入により確実に腎予後を改善できる症例も存在する。腎生検が診断に直接つながる症例も存在し、積極的な診断アプローチが大切である。
索引用語 腎障害, 肝炎ウイルス